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……
日常にAちゃんの存在が慣れ始めた頃。
急に「得意料理のレシピを言うからガクくんに作ってもらいたいな」なんて言うからびっくりした。作ってくれようとしてたのに、と思ったがすぐに察してしまった。
ああ、もうお別れの時が訪れるんだなって。
キッチンで2人で並ぶ。
食材を言われた通りに切るオレの手元を覗き込んできた。
「思ってたけど手際いいね」
「一人暮らし歴長いんで慣れっすかねぇ」
「へぇ…ガクくんの手料理食べてみたかったな」
ぽつりと小さく零れた言葉に手が止まる。そう、それは叶えてあげられない……
淀みかけた思考を頭を振って取り払った。
できあがった料理を前にいただきますと挨拶をする。1口、2口。確かに、前に食べたものと似た味だと、思う…。似た味なだけで彼女が作ってないからか何かが違う。
それでも、オレの食べる様を幸せそうに見つめるもんだからとても美味しかった。
ごちそうさまをし、使った食器を洗っているとAちゃんが震える声で別れを告げ出した。
｢ガクくん別れよっか｣
｢え｣
待ってくれ！
そんなに早いだなんて思っていなくて受け入れられない間にも彼女の存在が希薄になっていく。笑顔のまま消えようとする彼女にオレは体の中が冷たくなっていくのを感じた。
｢…やだよ。オレ別れたくない｣
｢……だめだよ、ガクくん｣
それなら、必ずまた会うから、
「オレは、ーーーーーーーー」
もう彼女はいなかった。
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作者名：Nk | 作成日時：2024年1月21日 22時
