初恋のお兄さん6 gk ページ9
▫️ 大学生(一人称視点)
あー、と言いながら視線をさ迷わせる彼をじっと見る。ある意味にらめっこだ。ここでひいたら、もうきっと彼は姿を現さないだろう。そんな予感がする。
数十秒か数分だったか、幾分か時間が経って彼の口から大きなため息が出た。勝った。
「...8年前も同じように襲われたキミが神社に来た頃には憔悴していたんだ。
忘れたらいつものキミに戻るんじゃないかと思ってオレは記憶を消すことにした。」
やっぱり。彼の力で記憶が消されていたのか。
でも、なんで初恋のお兄さんの思い出まで消されていたんだろう。
「なんで貴方のことまで...？」
「オレまで消したのは、オレというキッカケで襲われたことを思い出す可能性が高くて。しようがなく丸ごと消してキミに会わないようにしてた」
たしかに、あれは見ただけで体が勝手に震えるような存在だった。でも、
「そんなの貴方といれたら忘れられるから」
「へ」
え？
わたし、いま告白紛いのことを言っちゃった？
慌てて言葉を修正しようとしたけど、彼の顔の方に意識をとられた。
「...なんで貴方のほうが真っ赤なんですか」
「み、見ないでくれる！？
オレそういった事無かったから！耐性ないの！
あー！待ってくれません？！落ち着くから！」
待ったらダメだ。
耐性がないなら尚更。どうにか引き止めたい。
「貴方といたいから、が記憶を消さない理由にはなりませんか！」
私もきっと顔が真っ赤だろう。
でも、もうなりふり構わず想ってた言葉を言っていく。
思いのたけをぶちまけたあとは、全力疾走したかのように息が切れていた。
……幼少期に遊んでくれた優しいお兄さんなんて、初恋しないわけが無い。そして、それはずっと心に残るのだ。彼は私が恋してたなんて知らなかったから完全に記憶を消せてたと思ってたみたいだけど。年下の女の子の初恋を甘く見ないで欲しい。
顔を手で覆って言葉にならない音を発する彼の前に座り込んだ。これでダメならどうしよう。
ゆっくりと顔から手が離れて、見えるようになった彼の顔を見つめる。
「キミって物好きっすね」
話す時はいつも目線を合わせてくれてた彼が珍しく視線をずらして言ってきた。良かった。彼を忘れなくて済みそうだ。
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作者名：Nk | 作成日時：2023年4月30日 0時
