幸運の二本指 gk ページ29
▫️ピース教の教祖様(gk視点)
｢どちらに行かれたんだ！｣
｢教祖様ー！｣
教徒の探す声が聞こえてきて、小さくため息をついた。
ちょっと出かけようと姿をくらませただけでこれだもんな。一応、近くにいた教徒に｢探さないでください｣って言ったんだけど。
もうすこしここに隠れていよう。
近くで探す声が聞こえなくなったら出るか。
｢あの、教祖様｣
自分の胸元の位置からくぐもった声が聞こえた。ああ、教徒の1人であるAと一緒に隠れていたのだった。
探す教徒をやり過ごそうと物陰に隠れたはいいものの、洗濯かごを抱えたAに見つかったのだ。洗濯物を干しに行こうと通ったらオレを見つけたらしい。かごを置いてどうしたのか聞かれたときに、別の教徒が探す声が近づいてきた。見つかりたくなかったオレは咄嗟にAを抱き寄せて、静かにしてもらっていた。
あ、まだ胸元に押し付けたままだった。
｢っぷは、｣
｢大丈夫っすか？｣
｢だ、大丈夫です｣
はふはふ、息を整える様を見る。
うーん。ここで帰しても、戻ってきたAを見た他の教徒が察して問い詰めそうだ。たまには教徒の話も聞きたいし、彼女も連れ出すか。
｢あ、そうだ。Aも一緒に外歩きません？｣
｢そんな！教祖様と歩くだなんて！恐れ多いです！
それに私はまだ仕事もありますので、｣
かしこまった態度で拒否されちゃったぜ……
Aは生真面目でいい子なのは分かってる。こんなふうに洗濯途中の教徒の服を放って出掛けるなんて出来ない子だ。でも、
｢なぁ、オレは一緒に行きたいって言ってるんすけど。
……まぁ、そこまで言うならキミが選んでくださいよ。
オレと行くか、行かないか。｣
こんな問いかけ、選択肢は無いに等しい。わざとだしな。
キミもなんて答えるか分かってるよな？
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作者名：Nk | 作成日時：2023年4月30日 0時
