取りましょうか？ knmc ページ14
▫️社員(一人称視点)
ぐっと手を伸ばす、が届かない。
収録に使う道具を取ってくるように言われたけども、こんな高い位置に置いてるなんて思ってなかった。
つま先立ちしたら、ギリギリ指先が当たるぐらい。このままでは取れなさそう。
辺りを見回す。踏み台になりそうなのも見当たらない。どれ踏んでもいいのか分からないし……。
椅子でも取ってくるかな、と倉庫を出ると剣持さんが居た。
「あれ、次の撮影の小道具持ってくるように言われてませんでした？」
「ちょっと置いてある場所が高くて……って、聞いてたんですか？」
「真横で話してたら聞こえますよ」
そういえば、休憩中にスタジオでくつろぐ剣持さんたちの横で指示を受けてたな。
「どれが取れませんか？手伝います」
「え！大丈夫です！休憩しててください」
「はいはい、いいから。教えてください」
剣持さんのご好意に負けてすぐに倉庫の中へ舞い戻ってしまった。
あれです、と演者さんにしてもらってることに申し訳なさを感じながら、背伸びをして指を指す。すぐ横に立った剣持さんが小道具の入った箱を取ってくれた。ほんの少し背伸びしただけで軽々と届いた。意外と剣持さん身長あるんだ……
「どうぞ」
「ありがとうございます」
こうして見ると、剣持さんを見る時私は上を向いていたと自覚した。社長と甲斐田さんを見る時の角度と比べたら緩やかだけども。
一瞬、社長たちを見る辺りに視線が行ってしまって、思っていた事がバレたらしい。剣持さんがちょっと拗ねたフリをする。
「男子高校生でも、あなたより大きいんですからね」
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作者名：Nk | 作成日時：2023年4月30日 0時
