過去の部屋 ページ40
僕は今日も、中学校からの初恋の相手を見つめている。彼女は、中学の頃から背が少し伸びて、大人びた。
幼かったAちゃんも、大人っぽいAちゃんも、僕は好きだ。彼女が笑うと、ガラッと空気が変わる。その瞬間は、僕の目を見開かせた。
彼女はキレイだった。その姿は僕の心臓に優しく針を突き刺した。目は釘付けだった。どうして、こんなにも目を引く存在なのだろう。
「おはよ、今日もあの4人はうるさいね〜ほんとAちゃんのこと大好きなんじゃない?」
「…めんどくさ」
「嫌い?あの4人。」
「うるさいし、ベタベタするし、嫌い」
「……ふぅん。」
僕は癖の頬ずえを着いて、今日も興味ないふりをする。だけど、少しだけだけど、口角は上へと上がる。
それだけで僕は幸せだった。彼女が4人のせいでムッと眉を寄せる姿は、僕の何かを柔らかく包み込んで、僕は安心する。だけど、だんだんそれだけじゃ足りなくなった。
僕はこの話題をよく振ったが、勘の鋭い彼女は、ついに僕からそっぽを向いて、一言落とした。
「……嫌い、って言うか、苦手って感じ」
その瞬間、僕は着いていた頬ずえから顔を離して小さく『え、』と呟いた。何かがガラリと音を立ててくずれた。彼女は振り向いた。席が隣なのに、すごく距離が近くて、僕の心臓は今にも破裂してしまいそうだった。
「…よく、その話振ってくるよね。何が目的?」
「へ、…いや、別に?」
「ふぅん、変なの」
そう言って彼女は怪しく笑う。小悪魔に呪われた。いかにもゆるふわ系を装った、僕を釘付けにさせた、小悪魔だった。
「…私の事、好きとか言ったら、ヤツらの仲間入りだよ?」
「やだなぁ!僕はほぼ六年一緒じゃん!…何を今更…!」
彼女はまた向こうを向いた。もう一度こっちを見て。僕だけを見て。
大好き。
…どうしたら、僕を見てくれる?どんな瞳でみたっていい。憎んでても、怒ってても、怯えてても…あぁ、出来たら笑ってて欲しいけど。どんな瞳でも、僕だけのことを考えて欲しい。
あの4人のこと、考えてるのぐらい、分かってるよ。
略奪するなら、じわじわと、逃げないように、ゆっくり行き場を無くさなきゃ。そしたら、人間の本能的に、僕に縋り付くんだよ。
僕の意図的に行った、『誘拐事件のヒーロー』の劇なんだ___
*
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しらす - は?猫耳さかたんとか天使かよ (2019年4月23日 13時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - Blackgirlさん» コメントありがとうございます。続編もご期待に添えるよう頑張らせていただきます (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - 歩さん» コメントありがとうございます。続編もよろしくお願いします…! (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
Blackgirl(プロフ) - みんな一途で可愛い。続編期待してるで。 (2019年2月22日 23時) (レス) id: 61c7222caa (このIDを非表示/違反報告)
歩 - ついに続編ですか!!おめでとうございます!黒幕も出てきた(?)事だし、これからの展開が更に楽しみです!続編もふぁいとですっ! (2019年2月22日 20時) (レス) id: 13020661c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょうゆのすけ | 作成日時:2019年1月21日 16時