僕の部屋 ページ36
僕がAをそっと次の部屋の通路に送ったあと、即座に思いっきり扉を閉めてバッとセンラくんを見た。
「可愛いお顔が台無しですよ、まふくん。」
「…僕は、誰の手の中にいるんですか」
悔しかった。
僕らが貯めたお金使って、僕らの拗れた愛を踏みにじって、僕らの意図的な誘拐事件をじわじわと自分のものにしていく人が。
何が目的なのか__あぁ、そりゃあAなのだろう。何がしたいのか分からないけど、ここまでの僕らの行動さえ既に誰かの手の中だった、という事なのだ。
「僕らもやりたくてしている訳やないです。一種のアルバイトなんですよ。…この部屋に入って、可愛い女の子に、ちょーっとイタズラをするだけで、お金が貰える…なんて言われて。そんな喜ばしいバイト、高校生でやった事あるん?」
「……っ、馬鹿なんですか!!」
人を叩くなんて到底したことない僕でもつい手が上がってしまった。センラくんなんて、叩きたくないのに、悔しくて、それが虚しくて。
だけど僕の細い手首をパシッと掴んだ。まだ話の続きがあるようで。
「…僕らも引っかかった側です。うらたんや坂田達があんなに怒っとるなんて、僕らも想像してませんでした。」
「……は?」
僕は赤い目を見開いた。
僕とセンラくんの掴まれた手が、ゆっくり白い床に降りていく。
「…このままだったら、彼女は下手したら一生[あの人]に閉じ込められると思います。…まふくんと同じで、…[あの人]も彼女に逃げられるから閉じ込めたんですよ。Aさんのことが、大好きなのに変わりはないです」
「…結局、な、何が言いたいんですか…っ」
声が震えた。僕らと同じことを考えている?
だめだ、Aは僕のものだ。誰のものでもない。一生その[誰か]に閉じ込められるなんて、相当考えも付かなかった。
「_____逃げませんか?…ここから」
僕は瞬きも忘れて突っ立っていた。センラくんが耳元でそう言うから、真っ白い部屋で、頭まで真っ白になった。
「ど、やって…」
「僕も分かりません。この部屋、全部[あの人]が作ったものですし…でも、ここから出たら、もうこの白い部屋での可愛いAさんは見れない、という事やねぇ」
「…」
「…出たい?」
また、彼女に逃げられる。もう、怯えて僕の手を掴むことも無い。どうにかして、[誰か]のものにしないようにしたらいいんじゃないのか、なんて。
馬鹿な僕の答え。
「…………出たく、ない」
*
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しらす - は?猫耳さかたんとか天使かよ (2019年4月23日 13時) (レス) id: f34e486c2f (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - Blackgirlさん» コメントありがとうございます。続編もご期待に添えるよう頑張らせていただきます (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
しょうゆのすけ(プロフ) - 歩さん» コメントありがとうございます。続編もよろしくお願いします…! (2019年2月24日 15時) (レス) id: d6c32b13a2 (このIDを非表示/違反報告)
Blackgirl(プロフ) - みんな一途で可愛い。続編期待してるで。 (2019年2月22日 23時) (レス) id: 61c7222caa (このIDを非表示/違反報告)
歩 - ついに続編ですか!!おめでとうございます!黒幕も出てきた(?)事だし、これからの展開が更に楽しみです!続編もふぁいとですっ! (2019年2月22日 20時) (レス) id: 13020661c3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しょうゆのすけ | 作成日時:2019年1月21日 16時