き ページ7
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これは約二年前、及川が一年生だった頃の話。
「徹！おはよ〜」
「………はぁ。百合、吃驚するじゃん！」
こら、と及川が軽く頭を小突くと、朗らかに笑う彼女＿＿瀬川百合＿＿は、青高校一年生、青葉城西高校男子バレー部のマネージャー。
そして、及川徹の彼女。
マネージャーとして、彼女として、及川とその夢を中学時代から支えてきた。
彼女はよく笑い、明るく太陽のような性格で、誰からも好かれるような人物。
ひたむきに努力し、何事にも一生懸命な彼女はマネージャーの仕事もきっちりこなし、その人柄で男バレを明るくした。
幸せな日々が終わったのはその年の冬。
いつもと同じように部活をして、いつもと同じように二人で雪の降る帰り道を歩いていた。
「ねぇ、徹。アレ……」
慌てたように及川の肩を叩く百合が指さす先には、今にも車に轢かれてしまいそうな小学生。
「は！？」
「徹！！」
思わず走り出していた。
どうしようも無いのに、二人で小学生を抱え込む。
「ねぇ、徹」
「何？」
ドン、と徹の体を思い切り押す。
驚く及川に、彼女はいつものように微笑んだ。
「百合！！！！！！」
遅かった。
小学生を抱き締めたまま、必死に伸ばした手は空を切って。
百合を刎ねた車は、そのままコントロールを失って横転。
そんな事、正直どうでもよかった。
「ねぇ、何してんの……百合」
パタ、と道路に横たわる百合はどこからどう見ても助かる状態ではなくて。
俺を庇わなければ。そう思わずにいられなかった。
あのままだったら、三人とも怪我をしていた事は確実。
でも、死ぬ事は無かったのに。
「な、んで！ねぇ。百合。まだ、助かるから。大丈夫だから」
誰かが、救急車と叫んだ。
薄ら目を開けて浅い呼吸を繰り返す百合に、及川はとにかく根拠の無い大丈夫を叫んだ。
取り乱す及川の腕を百合が弱く掴む。
もういいと言いたげな視線に、気付かないフリをした。
「百合、百合……ねぇ」
「徹」
弱くてもしっかりした声で及川の名を呼ぶ百合。
遠くから、救急車のサイレンが聞こえた。
「好き。大好き。どうしようもないくらい好きなの」
「なにそれ。最期みたい、じゃんか」
「私は！徹の彼女になれて幸せだったよ。でも徹は私よりもうんと素敵な彼女さん見つけるんだよ？……だから、別れよう、徹。」
「は？」
＿＿＿俺といて、楽しいと思ってくれたなら。最期まで彼氏でいさせてくれたって良いじゃないか。
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とーこ(プロフ) - 尊さん» 素敵な話だなんて……！嬉しいです(*^^*)今新作頑張ってるので、待ってて下さいね(笑) (2021年1月19日 19時) (
レス) id: 846380440c (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 何この素敵な話(´;ω;｀)とても良いです！！ (2021年1月19日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
とーこ(プロフ) - りこさん» コメントありがとうございます！及川さん浮気したかと思いますよねww感動していただけて嬉しいです(*^_^*)よれればこれからも読んでくださいね〜！！ (2021年1月10日 8時) (レス) id: 846380440c (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 最初題名見たとき及川さん浮気したんかとおもったwwwとても感動しました！おもしろかったです！ (2021年1月10日 0時) (レス) id: 0909783799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：とーこ | 作成日時：2021年1月5日 13時
