あ ページ1
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冬も本格的に始まった頃。
空を見ていた彼女__蘭A__は、隣を歩く彼氏__及川徹__の肩を叩く。
『先輩、見て下さい!雪ですよ、雪!』
「あ、ホントだ!初雪だね」
『あれ、もっとはしゃぐと思ってたんですけど……意外です』
春、二年生になると同時に東京から引っ越して来たAは、宮城県で冬を過ごすのは初めてで。
普段よりも随分テンションが高かったのだが、
自分よりもはしゃいで遊ぶと思っていた及川のテンションが幾らか低いことに目を丸くした。
「そりゃ、ずっとここに住んでるし。慣れだよ。てか、A!及川さんの事、何だと思ってんの!」
『え…っと。好奇心旺盛な子供、ですかね』
「ねぇ辛辣!!!!A、何か最近岩ちゃんに似てきた事ない!?」
酷い!と騒ぐ及川に苦笑いを浮かべながら、Aは空をぼんやりと見上げる。
フワフワと降る雪は、今年の初雪。即ち、Aが宮城県で初めて経験する雪。
東京では真冬に少し降るくらいだった為、彼女は少なからずワクワクとしていた。
『宮城県って、こんなに早くから雪が降るんですね。……彼氏と過ごすのだって初めて、ですから、その……』
「ん?」
『……その、沢山遊べたらな、って』
何なんだ、俺の彼女。可愛すぎやしないか。
内心大荒れの及川だが、カッコよくしていたいのだろう、平静を装って返事を返す。
「いいじゃん。遊ぼーね」
『本当ですか!』
キラキラと目を輝かせるA。
普段は落ち着いている彼女だが、今日ばっかりは年相応……少し幼さを感じる程に喜んでいた。
「あ、それでね。聞いて!岩ちゃんに今日も何か分かんないけど理不尽に殴られたんだけど……!!」
あーだこーだと文句を垂れる及川に、結局仲が良いんだよなぁとAは微笑む。
一度だけ話した事のある、岩ちゃんこと岩泉先輩をぼんやりと思い浮かべた。
「もうすぐ信号変わっちゃう!」
『ぅわっ!!』
Aが岩泉の事を考えていれば、急に引かれた右腕。
引いたのは勿論及川で、そのまま走り出す。
『ちょ、急に……』
「いーの!」
信号の点滅し始めた交差点に勢いで飛び込んだ。
まだ、赤じゃないから……
二人で笑いながら走っていて。
曲がってくるトラックに気が付かなかった。
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とーこ(プロフ) - 尊さん» 素敵な話だなんて……!嬉しいです(*^^*)今新作頑張ってるので、待ってて下さいね(笑) (2021年1月19日 19時) (レス) id: 846380440c (このIDを非表示/違反報告)
尊 - 何この素敵な話(´;ω;`)とても良いです!! (2021年1月19日 17時) (レス) id: b48a344f5f (このIDを非表示/違反報告)
とーこ(プロフ) - りこさん» コメントありがとうございます!及川さん浮気したかと思いますよねww感動していただけて嬉しいです(*^_^*)よれればこれからも読んでくださいね〜!! (2021年1月10日 8時) (レス) id: 846380440c (このIDを非表示/違反報告)
りこ - 最初題名見たとき及川さん浮気したんかとおもったwwwとても感動しました!おもしろかったです! (2021年1月10日 0時) (レス) id: 0909783799 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:とーこ | 作成日時:2021年1月5日 13時