再び恋をはじめます【緑】 (ページ30)

今日:3 hit、昨日:56 hit、合計:362,955 hit

30 ◆ ページ30

＊＊＊

「阿部さ、ほんとのこと言えよ」

Aを家に送り届けてから翔太と二人で帰っていると、ピタリと足を止めた翔太が俺の目をじっと見て、真剣な眼差しで言う。

「本当のことって、」

「まだ好きなんだろ、Aちゃんのこと」

「……何言ってんの？違うって(笑)」

「笑って誤魔化すなって」

「……」

「素直になれよ。自分の気持ちに」

「………翔太は、それでいいの？」

「逆になんでだめなんだよ」

俺は別に誰がライバルになろうとも全力でアピるから、と視線を逸らそうとしない翔太のことを、羨ましいなって思った。

俺は、翔太がライバルだから勝てないんだろうなって思ってる時点で、気持ちで翔太に負けてんだよ。そんな弱い俺の背中を押してくれる翔太は強くて、頼もしくて、

「Aは、翔太といた方が幸せになれるよ」

「……お前、それ本気で言ってる？」

「………この期に及んで冗談は言わないよ、」

「…わかった。じゃあ特別に教えてやる」

「…？」

「Aちゃんはまだ阿部のことが好きだよ」

「え、」

「でもお前がそんなんなら、俺はもう絶対引かねえから」

後悔しても遅いからな、と言い放った翔太は歩き出す。

…後悔はもうしてるよ。こんなにも忘れられないってわかってたら、あの頃別れるという選択はしなかったのに。

あの頃の自分も、今の自分も、弱いままだ。

＊＊＊