私を知らないくせに

自由の女神 ページ10

side.Rikuwo


A空君ほんとかっこいかった!

噂をすれば、タイミングを見計らったかのように彼女から来た陽気なLINE。端末を見下ろした僕は険しい顔をしたスタンプと共にメッセージを送信する。

遊びに来てもいいけど、今度から予告無しに来ちゃダメだよ。みんなびっくりするから
Aうん、わかった!あと聞きたい事あって
なに?
A部屋の奥にいっぱいあったカメラ、何に使うの?

彼女にしては、意表を突いた文章だった。

「…………見られてたかぁ」

テレビを見ていたそらちぃの隣でポツリと呟いた僕は、少しだけ考えてこう送った。

撮影に使うの
A撮影?何の?

まぁこう言えばそう返ってくるだろうという感じの返信に、画面の文字の部分を素早くフリックする。

今日の四人で撮ってるの。あの部屋もそのために借りてる
Aふーん、そうなんだ。楽しそ

予想通りの興味無さそうな返事に思わず笑みがこぼれた。流石裏切らないなとスタンプを送ろうとした時、LINEの通知音が連続で部屋に鳴り響く。

A良いこと思いついた!
Aあたしが企画考えてあげる!
A面白いの!

「………うわぁ、そうきたか」

それ見ろ、なんか変な感じでノリノリじゃないか。これだから言うの嫌だったんだ。

A思いつき次第家行っていいよね
え?急だよ。ちょっと考えさせてよ
…あ、待って。ねぇ分かった!そらちぃに会いたいだけでしょ
Aバレたか

バレたかじゃないよ。メッセージの下に変なスタンプまで送ってきてさぁ。

Aまた今度動画見せてね
Aじゃあお風呂はいるからバイバイ

素早く並ぶLINEの後、よく見るキャラクターがお風呂へ飛び込むスタンプも送られてくる。次に僕がメッセージを送信しても、最早既読すら付かなかった。

「能天気…」

小さく呟いて、心残りを閉じ込めるように携帯の画面を消した。

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