君の心変わり ページ50
side.Tsurime
数日程アバハウスに顔を出してなかったけど、体調が戻ったらしく久しぶりにAがこの家に来た。「エイジの服返しにきた」と言ってた彼女だけど、あいにく家には俺しかいなくて、それでも良いかと聞けば「仕方ないな。ツリメで我慢するか」とか言われた。とは言えど特に用事も無かったのか、鼻歌交じりの彼女は退屈そうに寝室に寝そべってる。
「それなんの歌？」
彼女から出る途切れない鼻歌の題名を聞いた。携帯のゲームをしているのか、こちらを見ないで自作とだけ言ったA。
「ふーん。なんのゲームしてるの？」
「テトリ、………あぁ！！」
”テトリス”と言いたかったのだろう。ゲームオーバーの音楽が流れる画面から目を逸らして、死んだと呟いた彼女はじっとりと俺を見つめてくる。
「急に話しかけるから死んじゃったー」
「テトリスに死ぬとか無いと思う…」
「ツリメノセイダ」
「……なんだよ」
拗ねたように唇を尖らせた彼女。突然のカタコトに困っていれば、Aは直ぐに飽きたように俺から視線を外した。
「新記録だったのに」
もうやめた！と携帯を放ったA。今度は天井を見つめながらアバンティーズのオープニングの曲を器用に鼻歌で歌ってる。機嫌損ねたり普通に戻ったり、なんだか今日の彼女はいつになくせわしない。
「それ鼻歌で歌う人初めて見た」
そう言えば、ふふふと笑った彼女は寝室にひきっぱなしの布団の上で大きく寝返りを打つ。
「みんなの匂いがする」
布団に顔を付けて、ふんふんと鼻を鳴らしたA。よく嗅げるなぁと思いつつも尋ねる。
「おっさんみたいな匂い？」
すると意外にも「そうでもないよ」と返ってきた。
「洗剤とか、体臭とか、いろんな香りが混じってる」
”ほら”と彼女が言った。俺も嗅いでみろということか？
”別にいい”と頭を振れば、さっきのテトリスの時みたいにじっと見つめられる。「早く」と急かした彼女に渋々立ち上がった俺はAから少し離れた場所に寝転がって、そっと毛布に鼻をつけた。
「……まぁ、確かに臭くはない」
「エイジの匂いがする」
「え？そう…？」
「……………するよ」
「…………えぇ、するかなぁ……」
暫く二人して布団の上に寝そべっていれば、彼女はいつの間にか小さな寝息を立てて眠ってた。呑気な彼女の寝顔を見下ろす。
「…のび太かよ」
呟いた俺はもう一度布団を嗅いだけど、やっぱりエイちゃんの匂いっていうのは分からなかった。窓から入る太陽の暖かい光に少しばかりウトウトした俺は、いつの間にやら夢の世界の扉を開けてた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき(プロフ) - 久しぶりに神作家さんみつけてとっても嬉しいです！はっぴー！連投失礼しました´`* (2019年1月11日 16時) (
レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 数ページだけみてもわかるおもしろさでどんどん読み進めてしまいました！アバンティーズの会話とか、考え方とか実際言いそうだなぁと思って楽しかったです！(*^^*)とてもアバンティーズを愛してらっしゃることが伝わってきて、心が温まりました！展開もとても面白くて、 (2019年1月11日 16時) (レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らぴまる 。さん» 嬉しいです。私もコメントを見るだけで１日ずっとウキウキしてます^ ^ 毎日更新できたらいいなと思いつつも、みんなの言い回しで凄く悩んでいます。こんなこと言わなさそうだなと思ったらまた書き直す…の繰り返しです！でも楽しい！メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - るなさん» 今までの長編は一人をメインに書いていましたが、今回は四人もいる…(´-`)ということで誰がどのタイミングで何を言うかなぁと考えるのがちょっと大変です。ですが、何故かその中でそら君だけ無駄に使いやすいです！（笑）メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
らぴまる 。(プロフ) - すごく展開が気になる作品ですね！こちらの作品は1日の終わりのたのしみです！ (2017年4月1日 21時) (レス) id: 68c41e6b9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名
| 作成日時：2017年3月15日 0時
