棘の無い薔薇 ページ49
突然現れた彼にぎゅうとサンドウィッチを握りしめて、何故かあたしはおはようと言った。すると彼は呆れたようにあたしを見据える。
「おはようじゃないし。何してんの」
「…お昼、買いに来たの」
「寝てろよ。病人でしょ」
「いやぁ…お腹空いちゃって」
別に悪いことはしてないけど、なんかいけない所を見られた感じ。突っ立って彼を見つめていれば、サンドウィッチ潰れるよとエイジがあたしの手元を指差した。視線を下にやれば、袋の中でサンドウィッチの中身が溢れ出している。飛び出てるレタスに慌てて握力を緩めた。
「しかもその格好」
足元を見てふっと吹き出す彼に「あ、これは」と、しどろもどろになる。てか全部エイジのだし。
「これ。上の、可愛いなと思って」
黒地に、小さな花の刺繍が胸元に散らばっているトップスを指差せば、同じようにあたしの服を見たエイジ。
「それ俺のお気に入り」
「そうなの？」
「四番目ぐらい」
「……四番」
微妙な数字に苦笑いを漏らす。改めて思うのもおかしいけど、やっぱりちょっとへんな人だ。
「それ、買うの？」
彼はふとあたしにそう聞いてきた。エイジの目線はあたしが手に持ってるサンドウィッチ。うんと頷けば、彼はあたしの手からそれを取ってレジに並んだ。
「え、」
「お昼、これだけで足りんの」
財布をポケットから出した彼。
「他に何もいらないの」
「いや、いいよ。あたし自分で出すから」
慌てて小銭を出そうとした瞬間「フランクフルト」とお兄さんに向かって言った彼が、万札をレジのトレーに置いた。
「ほら、ここで揉めると俺がダサく見えるでしょ」
あたしの手を下に押しやって、悪戯っぽく笑った彼に軽く頭を下げる。
「…ゴチになります」
「いいってことよ」
ふざけた様子の彼の横顔はなぜか楽しそうだ。コンビニを出ればサンドウィッチと一緒にフランクフルトも手渡される。「あとこれもあげる」と彼はフルーツのゼリーも付け足した。戸惑うあたしに「元気になったらまた遊びにおいでよ」と笑った彼は車の鍵をくるくる回しながら駐車場へ歩いて行く。
「あ！エイジ！」
あたしは思い出したように彼の名前を呼んだ。
「昨日はありがとう！あとこれも！」
二つの袋を高く持ち上げたあたしへ「お大事に」と、そう言った彼はご機嫌な様子で手を振って車の中に消えていく。
もう少し話したかったなと思いつつも、あたしはコンビニを後にした。
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ゆき(プロフ) - 久しぶりに神作家さんみつけてとっても嬉しいです！はっぴー！連投失礼しました´`* (2019年1月11日 16時) (
レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 数ページだけみてもわかるおもしろさでどんどん読み進めてしまいました！アバンティーズの会話とか、考え方とか実際言いそうだなぁと思って楽しかったです！(*^^*)とてもアバンティーズを愛してらっしゃることが伝わってきて、心が温まりました！展開もとても面白くて、 (2019年1月11日 16時) (レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らぴまる 。さん» 嬉しいです。私もコメントを見るだけで１日ずっとウキウキしてます^ ^ 毎日更新できたらいいなと思いつつも、みんなの言い回しで凄く悩んでいます。こんなこと言わなさそうだなと思ったらまた書き直す…の繰り返しです！でも楽しい！メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - るなさん» 今までの長編は一人をメインに書いていましたが、今回は四人もいる…(´-`)ということで誰がどのタイミングで何を言うかなぁと考えるのがちょっと大変です。ですが、何故かその中でそら君だけ無駄に使いやすいです！（笑）メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
らぴまる 。(プロフ) - すごく展開が気になる作品ですね！こちらの作品は1日の終わりのたのしみです！ (2017年4月1日 21時) (レス) id: 68c41e6b9c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年3月15日 0時
