第一回鍋パーティー ページ35
side.Rikuwo
大きな昆布だけが揺らめく鍋はグツグツと煮え立ってる。底の深い皿を机の上に並べた僕は今にも降り出しそうな曇天を見上げた。窓を開けていると風と共に湿った匂いが部屋に滑り込んでくるのだ。
雨が入り込まないように窓を閉じれば、キッチンで白菜を切っていたそらちぃの”指を切った”と騒ぐ声が聞こえてくる。それを見たツリメが「絆創膏ならそこにあるよ」と棚の方を指差した。
「なんで鶏肉って言ったのに豚肉買ってきたのぉ」
その横でよく分からない不満を漏らすエイちゃん。いつもどおり騒がしいなと思っていれば、ピンポーンと家のチャイムが鳴った。
「来たっ、俺が出る」
真っ先に反応したそらちぃが怪我した左手の人差し指を上にあげたまま玄関に走る。そして「なんだよお前かよー」と叫んで、またキッチンに戻ってきた。
「なんだよってなんだよ」
苦笑いでリビングに入ってきたのはメンバーとも仲の良いYouTuberの太郎あげあげ。彼は僕の隣に腰掛けて、他に誰か来るのと尋ねて来る。
「太郎はお呼びでない、らしい」
未だに納得していない様子で豚肉を見つめてたエイちゃんが呟いた。
「なんで、呼んだのお前らじゃん」
酷いねって唇を尖らせた太郎。
「うげー、キモいからやめとけ」
絆創膏を人差し指に巻いたそらちぃが言えば、太郎は眉尻を大きく下げた。
「今日なんかあたり強くない？」
「気圧が下がってるからね」
エイちゃんの不思議な返事に首を傾げた太郎。途端にガチャリと扉が開く音がした。その音に今度こそという風に笑顔になったそらちぃが玄関に走る。
「遅れてごめ〜ん」
久しぶりに聞いた彼女の声。まだ始まってないよと空。沢山のビニール袋を持ったAがよたよたと部屋に入ってくる。
「すごい荷物。何持ってきたの？」
「お肉とか、野菜とか、お菓子とか…あ、初めまして〜」
話の途中に太郎が目に入ったのか、Aは彼に小さく頭を下げた。戸惑った様子の太郎も彼女に会釈をする。
「鶏肉は？」
空を押しのけて袋を覗き込むエイちゃん。あるよとAが言えば「流石！」って今日一番喜んでた。
「気ィ利くじゃーん」
そこまで鶏肉が食べたかったのか、エイちゃんは嬉しそうにキッチンへ鶏肉を持って行く。肉ばかり並べる彼に、そんなに置いたら狭いと空が不満を漏らした。
「あれ、鍋の中何も無い。六時に開始じゃなかったっけ？」
昆布だけが煮え滾る鍋を覗いたA。現在の時刻は六時半。アバンティーズ＋Aの、鍋パーティー開始はきっともう少し先だ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 328人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆき(プロフ) - 久しぶりに神作家さんみつけてとっても嬉しいです！はっぴー！連投失礼しました´`* (2019年1月11日 16時) (
レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 数ページだけみてもわかるおもしろさでどんどん読み進めてしまいました！アバンティーズの会話とか、考え方とか実際言いそうだなぁと思って楽しかったです！(*^^*)とてもアバンティーズを愛してらっしゃることが伝わってきて、心が温まりました！展開もとても面白くて、 (2019年1月11日 16時) (レス) id: 79b287e614 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らぴまる 。さん» 嬉しいです。私もコメントを見るだけで１日ずっとウキウキしてます^ ^ 毎日更新できたらいいなと思いつつも、みんなの言い回しで凄く悩んでいます。こんなこと言わなさそうだなと思ったらまた書き直す…の繰り返しです！でも楽しい！メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - るなさん» 今までの長編は一人をメインに書いていましたが、今回は四人もいる…(´-`)ということで誰がどのタイミングで何を言うかなぁと考えるのがちょっと大変です。ですが、何故かその中でそら君だけ無駄に使いやすいです！（笑）メッセージありがとうございました！ (2017年4月2日 23時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
らぴまる 。(プロフ) - すごく展開が気になる作品ですね！こちらの作品は1日の終わりのたのしみです！ (2017年4月1日 21時) (レス) id: 68c41e6b9c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名
| 作成日時：2017年3月15日 0時
