あまいあまいにがい03 ページ42
彼はきっと、見ただけでその女の子が自分の事を好きかどうか分かるのだ。恐らくあたしもそうだと察したのだろう。などと考えながら、あたしを呼び止めたジン君の、着崩したシャツの隙間から覗くネックレスを眺めた。
「一年の間で俺の変な噂流れてんでしょ?」
Aちゃん知ってる?と尋ねられ、途端に今まで聞いて来た沢山の噂が頭の中を飛び交った。迷いつつも、あたしはゆっくりと頭を縦に振る。
「何知ってるの」
ゆらりと揺れる彼の瞳。あたしを映す黒目を見上げて、あたしは恐る恐る彼に尋ねた。
「肩に薔薇の刺青あるって、本当ですか…」
「ああ、見たいの?」
それを聞いた彼はニヤリと微笑み、見透かすようにこちらを見下ろした。この空間だけ酸素が足りないみたいに、目の前に伸びて来た彼の手にあたしの呼吸は徐々に浅くなっていく。
「Aちゃんも俺に首絞められたい?」
"も"って事は絞められた女の子達がいるのだろうか。考えるあたしの喉元につぅと触った彼の指先。実際に絞められたわけじゃ無いのに、気管が細く縮こまった。柔らかい所に触れられてビクリと体を揺らしたあたしを見て、彼は悪戯っ子みたく微笑む。目を丸くして立ち尽くすあたしの頭にポンと手を置いたジン君。視線を下に降ろしたあたしに、”あのね”と近づいてくる彼の顔。吐息が掛かるくらい側に来た彼は、あたしの耳に唇を寄せて呟いた。
「首絞めてやるとね、女の子のあそこが締まって気持ちいいの」
「……………」
「やってみる?」
耳元でそう囁かれ、途端にあたしの顔は真っ赤になったと思う。それは悪魔の囁きのように甘く苦い。唇をきつく噛んで生唾を飲んだあたしに、”ははは!”と大きな口を開けて笑ったジン君。
「嘘だよ」
それだけ言い残しあたしに背を向けた彼は、まるで何も無かったみたいに元来た道を歩いて行った。ジン君がそこに居た余韻を残すように、香水の甘い香りが周りを漂っている。
「…………………」
彼の背中が見えなくなるまであたしは呆然とそれを見つめていた。静まり返る廊下に鳴り響く始業のチャイム。こめかみを伝った嫌な汗が、顎先まで落ちていく。あれだけあった食欲と、ジン君への期待はどこかしらへ飛んで行った。あそこでうんと頷いていれば、あの後どうなっていたんだろうと今でも思う。
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匿名(プロフ) - ゆさん» お返事遅くなりました。嬉しいコメントありがとうございます!実は私もお気に入りな、そらクイズです ^ ^ カップル設定はあまり書かないので、たまには仲良しもいいかなと思ってクイズ形式にしました(笑)また近々そらクイズかけたらな〜と妄想を膨らませています (2019年10月29日 0時) (レス) id: ffeb5d68ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - そらクイズが好きすぎて何回も見に来てしまいます…! (2019年2月4日 10時) (レス) id: 2e24e32ba3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 渡邊琥覇紅さん» あ、気が合いそうですね!これは少々マニアックかしら…( ゚д゚)と不安だったので、凄く嬉しいです^ ^ 私もジン君はこういう事して笑ってそうと思ったので、書いてて楽しかったです。でも実際されたら速攻別れると思います!メッセージありがとうございました! (2017年4月30日 20時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
渡邊琥覇紅(プロフ) - 匿名さん» いっくんをからかうの、凄くよかったです!!読んでて可愛いって思いましたw ジンくんの沈溺プレイ、一番好きです!ジンくんっぽいな、と思いました。更新楽しみにしてます! (2017年4月30日 13時) (レス) id: 8dd5b17f5a (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 荒黒#*.mitukiさん» ヒカルさんって書こう書こうと思えば思うほど出てこないのに、たまに天から脳内にエピソードが降ってくるように話を思いつくタイプの人です^ ^あと、ついつい髪の毛いじっちゃうんです(笑)個性的で似合ってますよね^ ^メッセージありがとうございました! (2017年4月25日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年3月1日 22時