キラキラキライ°Tanaka ページ5
夜中の二時頃、酒臭さを引き連れて家に帰ってきたのは田中さん。彼はバタバタと暴れながら、眠そうなモーリーの隣でテレビを見ていたあたしの元に飛び込んで来る。
「Aーーーー!」
「きゃあ!」
ラグビー部のタックルもいいところ、勢い余った突進に悲鳴をあげた。その声に眠りかけていたモーリーがハッと目を覚ます。お酒の臭いに包まれて顔を歪めたあたしは抱きついてくる田中さんを叩いた。
「ちょっともう痛ーい!田中さん!」
どれだけ押し返そうと、あたしの膝の上に倒れ込んだ彼はピクリともしない。手の先は凍るように冷たいのに体は熱いぐらい熱を持っていて、耳の先まで真っ赤だ。
「もーむり…慰めてよ」
「慰めてって……今日は女の人とご飯行ったんじゃなかった?」
「ホテル入ろうとしたら嫌がられた」
「……………」
残念でしたね、としか言いようのない台詞に呆れ返る。田中さんの様子を見下ろしたモーリーは、いつも通りかといった顔をしてからまたウトウトし始めた。
「あの女。序盤はいけると思ったのに、いざそうなったら勿体ぶんの」
「…本当に勿体無いと思ったんちゃう」
「あああ、そんなの無い…おじさんショック受けたの。だから慰めて」
酔っ払うとあたしに甘えてくる彼のこの癖、いつになったら治るのやら。初めはビックリしたけど、片手で数えきれなくなった辺りで嫌でも慣れた。「重いから離れて」と彼の体を押す。
「なんで?意地悪言わないでよ」
軽く充血した大きな目を眠そうにパチパチと瞬かせて、田中さんは子犬みたいな目をしてあたしを見つめる。その目を見下ろしたあたしは、彼を押し退けようとしていた手を離した。
「もー……」
目を逸らして溜息をついた。それを見た田中さんはニッコリと笑ってあたしの膝の中に顔を埋める。
「やった、A好き」
30手前のおっさんに好きとか言われても全然嬉しく無いし、酒臭い体で抱きつかれたってときめかない。
「もう俺にはAしかいないの」
嗚呼、この人ズルい。
「そういうのいいから水飲んで」
「ん…、Aいい匂いする、ね」
「お酒くさい田中さんのせいでそれも無くなっちゃう」
お風呂上がりで漂うシャンプーの香りに混じっていく彼の匂い。
「…あれ。なんか騒がしいなと思ったら、田中さんまた酔っ払ってんの?」
パソコンを持ったままこちらを覗き込んできたのはいっくん。彼を見た途端「おかえり」と笑った田中さんに「ただいまでしょ」と呆れたように微笑んだいっくんは言う。
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匿名(プロフ) - ゆさん» お返事遅くなりました。嬉しいコメントありがとうございます!実は私もお気に入りな、そらクイズです ^ ^ カップル設定はあまり書かないので、たまには仲良しもいいかなと思ってクイズ形式にしました(笑)また近々そらクイズかけたらな〜と妄想を膨らませています (2019年10月29日 0時) (レス) id: ffeb5d68ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - そらクイズが好きすぎて何回も見に来てしまいます…! (2019年2月4日 10時) (レス) id: 2e24e32ba3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 渡邊琥覇紅さん» あ、気が合いそうですね!これは少々マニアックかしら…( ゚д゚)と不安だったので、凄く嬉しいです^ ^ 私もジン君はこういう事して笑ってそうと思ったので、書いてて楽しかったです。でも実際されたら速攻別れると思います!メッセージありがとうございました! (2017年4月30日 20時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
渡邊琥覇紅(プロフ) - 匿名さん» いっくんをからかうの、凄くよかったです!!読んでて可愛いって思いましたw ジンくんの沈溺プレイ、一番好きです!ジンくんっぽいな、と思いました。更新楽しみにしてます! (2017年4月30日 13時) (レス) id: 8dd5b17f5a (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 荒黒#*.mitukiさん» ヒカルさんって書こう書こうと思えば思うほど出てこないのに、たまに天から脳内にエピソードが降ってくるように話を思いつくタイプの人です^ ^あと、ついつい髪の毛いじっちゃうんです(笑)個性的で似合ってますよね^ ^メッセージありがとうございました! (2017年4月25日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年3月1日 22時