もっとして03 ページ3
「いつもやったらチューしてくれるやん…」
ポツリと呟いたあたしの口元を、ベッドまで走ってきたいっくんが凄い勢いで覆いにくる。いつもの香りではなく、むわぁと香ったお酒の匂いに眉をひそめた。
「モーリー、飲み過ぎ!顔と髪の毛が赤で一致してる!」
興奮した様子の田中さんの声が部屋に響く。
「見て田中さん、どこまでが顔やと思う?」
「何それ下らんわ、この辺?」
「違いまーす!ここでーす!」
「そこ髪の毛やん!」
どうでもいい事で騒いでるバカ二人にはあたしの声が聞こえなかったのか、カメラの前で何やら下らないやり取りをしていて気付きそうにもない。ホッとした様子のいっくんはあたしの口元を押さえたまま怒った顔をする。
「…変なこと言うなや」
向こうに居る二人を横目で見たいっくんを、あたしは沈黙の中で睨んだ。
「…………変な事ちゃうもん」
「ちょっとやから、すぐ終わるから」
お願いと唇を尖らせて眉を下げた彼だが、可愛くお願いしたって程度がある。あたしは唇を薄く開き、彼の指を舌でなぞった。柔らかい感触と共に少しだけ風味がある。
「!」
驚いてあたしから手を離したいっくんを鼻で笑った。
「なんかイカ臭い」
「…え?イカ?俺、今日は一人でしてないで」
何を勘違いしているのか、微かに頰を赤くした彼にあたしは顔を歪める。アホか。
「イカ、……おつまみの匂い」
「あ!そっちか」
そっちかって。逆に一人でし終わったあと手洗わんの?
別の不信感が生まれそうになっていると、モーリーの欠伸混じりの「もう始めんで」が聞こえてきて、あたしはハッとする。そのカメラの位置からだと部屋が全部丸見えだ。
「待って、部屋汚すぎるやろ。片付けるからちょっと待ってや」
そんなんええわと嫌そうな顔をしたいっくんの手を強引に引いて、あたしはゴミ袋を取りに彼と一緒に部屋を出た。リビングの扉をパタンと閉めると、最早待とうともしないモーリー達が部屋で騒ぎ出す。
「ちょっと汚いぐらい別にどうって事ないやん」
掴んでいたいっくんの腕を離したあたしは、今閉めたばかりの扉に彼を強引に押し付けた。いわゆる壁ドン、ではなく扉ドン。
「……え」
驚愕の声を上げる彼。ゆっくりといっくんの顔を見上げれば、動揺を示した彼の瞳の奥が揺れているのが窺える。
「なにす、ん」
言いかけた言葉を遮るように彼の唇に噛み付いた。無理矢理口内に舌を突っ込めば、彼の唾液に混じり微かにレモン酎ハイの味がした。
「いっくんレモンの味する」
そう言って彼の唇を舐めれば、いっくんは頬を赤くして項垂れる。
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匿名(プロフ) - ゆさん» お返事遅くなりました。嬉しいコメントありがとうございます!実は私もお気に入りな、そらクイズです ^ ^ カップル設定はあまり書かないので、たまには仲良しもいいかなと思ってクイズ形式にしました(笑)また近々そらクイズかけたらな〜と妄想を膨らませています (2019年10月29日 0時) (レス) id: ffeb5d68ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - そらクイズが好きすぎて何回も見に来てしまいます…! (2019年2月4日 10時) (レス) id: 2e24e32ba3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 渡邊琥覇紅さん» あ、気が合いそうですね!これは少々マニアックかしら…( ゚д゚)と不安だったので、凄く嬉しいです^ ^ 私もジン君はこういう事して笑ってそうと思ったので、書いてて楽しかったです。でも実際されたら速攻別れると思います!メッセージありがとうございました! (2017年4月30日 20時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
渡邊琥覇紅(プロフ) - 匿名さん» いっくんをからかうの、凄くよかったです!!読んでて可愛いって思いましたw ジンくんの沈溺プレイ、一番好きです!ジンくんっぽいな、と思いました。更新楽しみにしてます! (2017年4月30日 13時) (レス) id: 8dd5b17f5a (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 荒黒#*.mitukiさん» ヒカルさんって書こう書こうと思えば思うほど出てこないのに、たまに天から脳内にエピソードが降ってくるように話を思いつくタイプの人です^ ^あと、ついつい髪の毛いじっちゃうんです(笑)個性的で似合ってますよね^ ^メッセージありがとうございました! (2017年4月25日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年3月1日 22時