無我夢中°Mahoto ページ13
「渡辺、32ページの4行目」
聞こえた先生の言葉に、あたしは隣の席の彼に目をやった。また寝てる。
一番左側、窓際の席がそんなに心地いいのか彼はこの席になってから1日の殆どを寝て過ごしてる。なので先生に当てられがちだ。その度にあたしが彼を揺すって起こす。
「マホト」
「………………」
「起きて、当てられてる」
「……………なに」
乱れた癖毛の間からあたしを薄目で見た彼。マホトの目の前に自分の教科書を差し出す。
「32ページ、4行目」
「……………何が?」
寝ぼけてる彼に「だから」と教科書を押し付ければ「多分読めないし代わりにAが読めば?」なんて声が何処からともなく聞こえて、結局あたしが英文を読むことになる。今週に入ってからこのくだり何回目だ。
隣の席になって気付いたけど、彼は本当に寝起きが悪い。授業終了のチャイムが鳴ったとしても起きないし、昼食でも起きない。「次の時間は移動教室でーす」そんな声が聞こえても絶対起きやしない。本当に意地でも起きないから彼の友達ですら「起きてる時は起きてる」なんて放任主義なのだ。
「マホト、移動教室だよ」
騒ぎながら教室から出て行くクラスメイトの背中を目で追いながら彼の肩を揺らす。
「ねぇ、起きてよ」
肩を強めに叩いても、うーんと唸るだけ。こんなのが続いてるといつか留年しちゃう。
「Aちゃん鍵閉めよろしく」
ドアの前にいた子にそう言われる。返事をしたあたしは一層激しく彼の体を揺すぶった。
「〜〜〜」
言葉になってない何かを発した彼。溜息を吐いたあたしはいつまでも眠るマホトの目の前にしゃがむ。
「本当によく寝るよね。マホト君は、眠り姫ですか」
組んだ両腕の間に顔を乗せて、スヤスヤと気持ちよさそうに寝息を立てる彼を眺めた。
「眠り姫がどうやって起きたか知ってる?」
尋ねたところで返事が返ってくるわけもない。あたしは彼の整った鼻筋を見下ろす。ゆっくりと首を傾けて、眠る彼の唇に自分の唇を押し付けた。
「………ん」
ぱちりと目を開けたマホト。教科書を持って目の前に立っていたあたしはこちらを見上げた彼に笑う。
「おはよう」
「…………おはよ」
「移動教室だよ。早く行こう」
「……うん」
返事をして猫みたいに伸びをしたマホトは「なんかチューされる夢見た」と目をショボショボさせながら呟く。あたしは良い夢見たねと彼に笑うのだ。
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匿名(プロフ) - ゆさん» お返事遅くなりました。嬉しいコメントありがとうございます!実は私もお気に入りな、そらクイズです ^ ^ カップル設定はあまり書かないので、たまには仲良しもいいかなと思ってクイズ形式にしました(笑)また近々そらクイズかけたらな〜と妄想を膨らませています (2019年10月29日 0時) (レス) id: ffeb5d68ca (このIDを非表示/違反報告)
ゆ(プロフ) - そらクイズが好きすぎて何回も見に来てしまいます…! (2019年2月4日 10時) (レス) id: 2e24e32ba3 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 渡邊琥覇紅さん» あ、気が合いそうですね!これは少々マニアックかしら…( ゚д゚)と不安だったので、凄く嬉しいです^ ^ 私もジン君はこういう事して笑ってそうと思ったので、書いてて楽しかったです。でも実際されたら速攻別れると思います!メッセージありがとうございました! (2017年4月30日 20時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
渡邊琥覇紅(プロフ) - 匿名さん» いっくんをからかうの、凄くよかったです!!読んでて可愛いって思いましたw ジンくんの沈溺プレイ、一番好きです!ジンくんっぽいな、と思いました。更新楽しみにしてます! (2017年4月30日 13時) (レス) id: 8dd5b17f5a (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 荒黒#*.mitukiさん» ヒカルさんって書こう書こうと思えば思うほど出てこないのに、たまに天から脳内にエピソードが降ってくるように話を思いつくタイプの人です^ ^あと、ついつい髪の毛いじっちゃうんです(笑)個性的で似合ってますよね^ ^メッセージありがとうございました! (2017年4月25日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年3月1日 22時