犬、飄々と淡々と ページ14
「知らない。既読も付かないし、こっちが聞きたいよ」
てつやに返す口調がなんだか荒くなった。そこまで腹が立ってた訳ではなかった筈なのに心の奥底では苛々していたらしく、微かに嫌悪感が募る。
「Aと昼飯食べるって教室出てったけどな」
「えぇ?来てないよ」
「入れ違ったのかもね」
「そうか…戻った方が良いかな」
「いや、ライン見ると思うしいずれ会うんじゃない」
「ならいいよね。もうお腹すいたし」
開いたままだったお弁当に視線を落とし、いただきますをする。
「てつやも一緒に食べよう」
「え?うーん」
「誰かと約束してるの?」
「してないけど、さぁ」
「ならいいやん」
躊躇う彼の手を強引に引いて隣に座らせた。周囲には同じクラスの子が何人かいて「福尾くんと別れたのかなぁ」なんて、そんな噂でも聞こえてきそうなぐらいジロジロと見られる。
「…めっちゃ見られてる気がする」
ベンチに座り直しながらも居心地悪そうに呟いたのはてつや。
「気のせいじゃんね」
あたしも同じように視線を感じてたけど、気を張ってそんな風に返すのは、どうしても素直になれなかったからだ。
「約束忘れちゃったのかな」
お弁当のおかずを箸で掴み、あたしは目を細める。二人きりで…とか怪しげな雰囲気で誘われたから重たい話をされると思ったけど、そうでも無かったのか。
「そう思ったらなんかムカついてきた」
「なんでAが怒るの」
「だって無駄に不安にさせといて、これはないよって感じじゃん」
言いながらも勝手に自分で不安になって怒っているだけではないかとも考えられた。あれこれ悩んでも結局は相手と対面していない一人だけの世界だ。
「怒ると疲れる…」
思考のし過ぎで疲労していた上に苛立つと余計に疲れがかさ増しされる。溜息を吐いて卵焼きを口に押し込んだ。一喜一憂するあたしを見兼ねたのか、フォローをいれてくれるてつや。
「りょうが約束を忘れるってことはないと思うよ。顧問に呼ばれたとか、急ぎの用事があったのかも」
「ふぅん」
「大会前だし、あり得るよ」
「どうでしょうね」
「もう今のAは何言っても怒る人やん」
てつやは手に持った菓子パンを頬張りながら笑った。彼の言う通りだったこともあるが、てつやに当たる自分に気づいてもう何も言い返さなかった。
「気長に待とう」
言いながら、もう一つのパンに手を伸ばすてつや。口の端にジャムのような赤色の何かが付いていて、それを目で追いながらもあたしは浅く頷いた。
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あおい(プロフ) - 一気見してしまいました!続きが気になります…! (7月29日 19時) (レス) id: 5d8097aa88 (このIDを非表示/違反報告)
こなん - 1番好きな雰囲気のストーリー!続きも楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2022年10月20日 15時) (レス) @page14 id: d5939a1a6f (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - 面白くて切なくて最高です!続き楽しみに待ってます!頑張ってください^_^ (2022年8月15日 15時) (レス) @page14 id: 85ad4508c6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - くぅかなさん» コメントありがとうございます!そう言っていただきとても嬉しいです。甘酸っぱい学園青春ストーリー!…みたいなのを考えていましたが、昼ドラのような雰囲気になりそうな気配を見せていますね。これからどうなるのか最後まで見守っていただければと思います! (2022年7月7日 9時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな(プロフ) - やばい!一気読みしてしまった!続き待ってます! (2022年7月3日 9時) (レス) id: c4e0c26ecd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2022年4月16日 11時