犬、下駄とバカ達 ページ12
とりあえずといった風に職員室の方に走ったゆめまる達を追いかければ、確かに部屋の前の廊下でしばゆーがめちゃくちゃ怒鳴られていた。
「何で怒られてるの?」
「下駄履いて学校来たらしい」
「しょうもな…」
「その履いてきた下駄を足で投げて飛ばしたら、担任の車の窓ガラスに当たって割れたんだって」
そんな変なことをする人いるのかと呆れつつも、ニヤニヤと楽しそうにしている三人を眺める。しばゆーが怒られていることがそんなに面白いのか、先生から死角になった位置から叱責されているしばゆーを笑かそうとちょっかいをかける彼等は小学生みたいだ。あんなにしんどい朝練の後に、これだけはしゃげるのは本当に凄い。
「ほんとバカだなぁ、あいつ」
「動画撮ってストーリーにあげよ」
「俺も」
あたしからすれば三人で肩を並べて騒いでいる君達もバカの仲間だけど、少し分かる気もする。だって片足は下駄を履いているのにもう一つは裸で、左手で下駄を持って何とも言えず仏頂面で先生に叱られているしばゆーは確かに滑稽な姿で情けないを通り越してもはや面白い。
「あたし、先に戻るね」
これじゃあ彼等と同じようなものだなと皆の背中に声をかけた。ウキウキワクワクしてる男達の適当な返事に呆れた気持ちで帰ろうとすれば、くっと手首を引いて呼び止められる。
「昼ご飯、一緒に食べよーよ」
りょうに笑いかけられ、返事をしようとすればゆめまるがニヤリとこちらを振り向く。
「ほんと仲良いねぇ」
茶化すなよとてつやがフォローを入れる隣で、りょうはいつも通り気にする素振りすら見せない。
「教室うるさいし中庭行こ」
なんで五月蝿いのが嫌なんだろう。何か特別な話をされるのかも、他の人がいたら話しにくいような。
「みんなで食べるなら…」
「え?やだよ、二人がいい」
屈託ない口調で、何の躊躇いもなくそう言った彼はオマケとでもいう風にあたしの目を見てにっこりと笑った。心臓を強く掴むような笑顔に視線を逸らせず唇をきゅうと噛む。恥ずかしげも迷いすらも無く言い放つところがりょうらしい。久しぶりに彼のそんな言動に出くわしたなと思った反面、あまり彼らしくないとも思った。
「まぁ……いいよ」
「じゃあ迎えに行くね」
「うん…」
「またあとで」
少し前にもこんな会話をしたなぁとあたしはぼんやりと考える。その時は結構ウキウキしてた。でも今は反対の気持ちな感じもする。
説教中のしばゆーを笑かすことに成功したのか、柴田!と叫ばれて一層怒鳴られている様子が気になりつつもその場を後にした。
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あおい(プロフ) - 一気見してしまいました!続きが気になります…! (7月29日 19時) (レス) id: 5d8097aa88 (このIDを非表示/違反報告)
こなん - 1番好きな雰囲気のストーリー!続きも楽しみに待ってます!頑張ってください!! (2022年10月20日 15時) (レス) @page14 id: d5939a1a6f (このIDを非表示/違反報告)
あむ(プロフ) - 面白くて切なくて最高です!続き楽しみに待ってます!頑張ってください^_^ (2022年8月15日 15時) (レス) @page14 id: 85ad4508c6 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - くぅかなさん» コメントありがとうございます!そう言っていただきとても嬉しいです。甘酸っぱい学園青春ストーリー!…みたいなのを考えていましたが、昼ドラのような雰囲気になりそうな気配を見せていますね。これからどうなるのか最後まで見守っていただければと思います! (2022年7月7日 9時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
くぅかな(プロフ) - やばい!一気読みしてしまった!続き待ってます! (2022年7月3日 9時) (レス) id: c4e0c26ecd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2022年4月16日 11時