君も犬になってもいいよ【東海オンエア】

犬、罪悪感 ページ11

朝練終わり、体育館前に座っていたてつやに昨日はありがとうと声をかけようとした時、後ろから肩を叩かれた。あたしとてつやは後ろを振り返る。

「A、おはよ」

既に体操服から制服に着替えていたりょうがニコニコであたしを見下ろしていた。

「あ、おはよう」

「朝練中ずっと眠そうだったね。先輩が気にしてたよ」

「あぁ…、嫌なことあった時は走ったらいいよって言われた」

「ん？嫌なことあったの？」

「えー……いやぁ」

てつやがゆらりと視線を流してあたしを見た、と思うけどあたしは見ないようにした。

「朝練お疲れ。先に教室戻ってるわ」

気を遣ったのか、てつやがその場から立ち去ろうと鞄を背負い直す。その瞬間、鞄に付いていた猫のキーホルダーが大きく揺れてあたしは何とも言えず罪悪感を感じた。

「もしかしてAって、てつやと河川敷に居た？」

唐突なりょうからの問いかけに歩き出そうときていたてつやが足を止める。あたしは自分の鞄に付いているてつやの猫と同じデザインの人形を隠したくなった。だけれども思い直す、別に何も悪いことはしていないと。なら隠す必要は無い。

「てつやと、居たよ」

「そうなんだ」

小さく微笑んだ彼から思っていたよりもあっさりとした返事が返ってきて拍子抜けしたが、その後は笑顔のまま何も言わない。てつやが何かを話す理由もないし、次はあたしのターンなのかと唇を開こうとした時、更衣室から飛び出てきたゆめまるがあたし達の中にドンと割って入ってきた。その勢いでてつやがあたしにぎゅうと寄りかかって来たが「ごめん」と直ぐに離れる。

「しばゆーが担任に怒られてるから見にいこうぜ！」

驚いたあたしは目を丸くしたまま、興奮しているゆめまるを見上げた。怒られてるから見に行こうとか笑顔で言う人初めて見た…と思っているのだ。ゆめまるはそんなことお構いなしに早く早くと急かす。

「なにそれ、面白そう」

真っ先に反応したのはりょう。勢いよく立ち上がった彼は今までの話がなんでも無かったかのように、朝練で疲れ切っているかと思いきや全然そんなことも無いゆめまると楽しそうに走って行く。残されたてつやとあたしは顔を見合わせて、特に何も交わさず逸らした。

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