てつや、ボタンの掛け違い ページ47
その時俺は、思わず鞄を落としそうになってた。指先がじわじわと熱くなり、心臓が飛び出そうなぐらいドキドキしてくる。一緒に帰ろうとりょうを探しに保健室に来れば、オレンジ色に染まった景色の中で、りょうが眠ってるマネージャーにキスしてるところを目撃した。見てはいけないものを見てしまったような、でも絶妙に話のネタに出来るような、何とも言えないタイミング。開けっ放しの扉の前に突っ立って、俺はりょうに声をかけようかどうか迷っている。
「うわ………!びっ……くりした…」
一歩を踏み出せずにいると、マネージャーの慌てた声が保健室の奥から聞こえてくる。部屋を覗くと、飛び起きた彼女の驚いた顔が見えた。だけどキスされたことに気付いた訳ではなく、人の気配にビックリしている様子だった。何事もなかったかのように目の前で微笑むりょうに「なんでいるの」と至極当たり前な質問を飛ばす彼女。
「あぁ…頭いったぁ……」
身体を起こすなり険しい顔をして側頭部を押さえ、乱れた髪のまま俯く彼女にりょうが尋ねる。
「どれぐらい寝てたの?」
「分かんない…多分一時間ぐらい」
「大丈夫?貧血?」
「そんなんじゃないんだけど、顔色悪いからって寝かされてた」
「そうなんだ。なんかAのクラスの子達が、面白いこと言って俺のこと呼びに来たんだよ」
「………面白いことって」
何も面白くないと慣れた様子で呟くマネージャー。ぐっと伸びをした彼女は、あくび混じりにベッドから降りて床に落ちていたスリッパに足を通す。
「りょう、ずっとここに居たの?」
「さっき来た。でも気持ち良さそうに寝てるから起こさなかったの」
「なんかやだなー、起こしてよ」
「子供みたいに寝てたからね」
「なにそれ。もっと嫌だ」
「だって可愛かったから」
そう言って笑ったりょうに、面食らった様子で言葉を詰まらせるマネージャー。だけど困っているというよりも、照れ臭くて返事をしていないように見えた。
彼等は居るだけでその場所を特別な空間に変える力を持っているらしい。鞄の紐を強く握った俺は二人から視線を逸らして、保健室を後にした。
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匿名(プロフ) - エルタソさん» お返事遅くなりました。こちらこそコメントする事への高いハードルを越えてメッセージを残して下さり、私へのキュンキュンをありがとうございます!見てくださるだけで充分に、本当に有難く支えられている事を実感しております!また是非、覗きに来て頂ければ幸いです。 (2021年1月14日 2時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
エルタソ(プロフ) - 初めまして、最近読み始めたのですがとてもキュンキュンしています!どうにもこの気持ちをなかなか言葉にしにくいのですが、どうしてもキュンキュンしたことを伝えたくてコメントを書かせていただきました!これからもご自身の無理のない範囲で更新頑張ってください (2020年11月19日 23時) (レス) id: e58e659101 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - ヒロさん» 度々メッセージくださり嬉しいです!ありがとうございます。連打機能あれば素敵ですね!ぽてぽて歩くてつや君の良さが伝わればいいなと思って捩じ込みましたが、共感していただき私も胸が高鳴っています。。これからもヒロさんの小さな楽しみになれるよう頑張りますね! (2020年11月12日 22時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ(プロフ) - 今日の更新が素晴らしすぎて☆連打したのに、評価10点じゃ足りないしそもそも評価済みでした!!!きゅんきゅんやばいし個人的にぽてぽて歩くてつやがツボすぎました…。何度もコメントしてすみません…ただこの胸の高鳴りを伝えたくて……返信不要ですorz (2020年11月11日 23時) (レス) id: e6bb449d2f (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - こゆみさん» てつや君はお兄さんというよりも私の中では弟っぽいイメージの方なので、中々男らしさを発揮できずにいます(笑)今後かっこいいてつや君が顔を覗かせる時が来るのか、来ないのか…最後まで見守っていただければ幸いです!嬉しいメッセージありがとうございました! (2020年11月10日 0時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2020年9月22日 16時