てつや、瞬きをする ページ41
Side.てつや
彼女の睫毛は、彼女が目を伏せる度に高い頬に影を作る。薄い瞼に乗ったキラキラが光ると、これらは俺には無いもので遠いものとさえも感じた。ここまで自分と違う生き物に、一体何を話せばいいのだろうと俺はさっきからずっと悩んでる。
「ごめん、遅くなった」
俺は隣に座るマネージャーから、こちらへ駆け足でやってきたりょうへ視線をやる。りょうの声が聞こえた時、やっと来た…と内心思ってホッとした。
「何の話だったの?」
迷わずマネージャーの横に腰掛け、座るなり弁当箱を開いたりょうに尋ねる。
「大会のこと。去年優勝した高校また出るけど気負うなって話」
「ああ、そういえば言ってたような」
去年は先輩がその高校にギリギリのところで負けたらしい。多分その話がプレッシャーになってる。りょうの気持ちが痛いぐらい分かる俺は眉を顰める。
「ほんと、テスト期間被って最悪だな」
「まぁ…それは他の学校の奴らも一緒だし」
俺がりょうを見るその視界に、弁当を膝に乗せたマネージャーがちらちらと映ってる。彼女は隣に掛けたりょうを見た後、何も言わずご飯を食べてた。
俺はふと、彼女が分からないような話で盛り上がろうとしている自分に気付く。でも彼女を交えて三人で話す会話の内容が思いつかないし、話しかけようと思うと口元が少し強張る。
「A、授業眠たかったでしょ」
りょうが黙ったままのマネージャーに声を掛けた。彼女はりょうの方に目をやり頭を縦に振る。
「眠たかった。半分寝てたよ」
「俺も一時間目記憶無い」
「分かる。あたし今もまだ眠いもん」
「朝練あると俺らもいつも眠たいよ。ね、てつや」
マネージャーから俺に話を振ったりょうは、人を取り込むのがうまい。上手いではなく巧い。さらりとナチュラルに自分のコースに落とし込んで、気付けばみんなりょうのことを好きになってる。意図せず言動が巧妙な彼が、不器用な俺からすれば少しだけ羨ましい。
「これからずっと朝練が続いたら、あたし起きれないなぁ…」
あくび混じりに言ったマネージャー。りょうはふっと微笑んで彼女の顔を覗き込む。
「俺がAの家まで起こしに行こうか」
「えぇ、やだ」
「なんで?いいじゃん」
「だって家から出てきた寝起き顔見られるの恥ずかしいもん」
「それならもう今朝の朝練で見ちゃった」
「あ、ほんとじゃん」
顔を見合わせて笑った二人は、いつの間にか距離が近づいている。仲良いなぁ、なんて口には出さずに言葉を飲み込んだ。
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匿名(プロフ) - エルタソさん» お返事遅くなりました。こちらこそコメントする事への高いハードルを越えてメッセージを残して下さり、私へのキュンキュンをありがとうございます!見てくださるだけで充分に、本当に有難く支えられている事を実感しております!また是非、覗きに来て頂ければ幸いです。 (2021年1月14日 2時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
エルタソ(プロフ) - 初めまして、最近読み始めたのですがとてもキュンキュンしています!どうにもこの気持ちをなかなか言葉にしにくいのですが、どうしてもキュンキュンしたことを伝えたくてコメントを書かせていただきました!これからもご自身の無理のない範囲で更新頑張ってください (2020年11月19日 23時) (レス) id: e58e659101 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - ヒロさん» 度々メッセージくださり嬉しいです!ありがとうございます。連打機能あれば素敵ですね!ぽてぽて歩くてつや君の良さが伝わればいいなと思って捩じ込みましたが、共感していただき私も胸が高鳴っています。。これからもヒロさんの小さな楽しみになれるよう頑張りますね! (2020年11月12日 22時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ(プロフ) - 今日の更新が素晴らしすぎて☆連打したのに、評価10点じゃ足りないしそもそも評価済みでした!!!きゅんきゅんやばいし個人的にぽてぽて歩くてつやがツボすぎました…。何度もコメントしてすみません…ただこの胸の高鳴りを伝えたくて……返信不要ですorz (2020年11月11日 23時) (レス) id: e6bb449d2f (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - こゆみさん» てつや君はお兄さんというよりも私の中では弟っぽいイメージの方なので、中々男らしさを発揮できずにいます(笑)今後かっこいいてつや君が顔を覗かせる時が来るのか、来ないのか…最後まで見守っていただければ幸いです!嬉しいメッセージありがとうございました! (2020年11月10日 0時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2020年9月22日 16時