君の犬になってもいいよ【東海オンエア】

犬、沈黙は金 ページ39

りょう良い天気だから中庭でご飯食べん?

四時間目の終わりに来たLINEに『いいよ』と返信するあたし。少し前なら『行かない』と迷わずに送っていたであろう提案だけど、今日はウキウキしながらオッケーした。

いいよ
りょうありがとう
りょうてつや達も連れて行くね
分かった

連れて行くって、犬みたい。そこまで考えて、あたしは自分がスマホの前でニヤニヤしていることに気付く。恋してるってこういうことを言うのだろうか。

「何ニヤニヤしてんの」

「りょうが中庭でご飯しようって」

「へー、いいやん」

「良いんだけど、なんか緊張する」

約束して彼と校舎で会うのは初めてで、改まって顔を合わせるとなると気張る。それともあたしの心持ちが変わったのか、会えるのを嬉しく思う自分もいた。今回は私達は邪魔しないでおくね、なんてケラケラと笑いながら机へ昼食を広げだす彼女達を横目に、謎の決心をしたあたしはお弁当を掴んでいざ出陣。緊張の面持ちで中庭へ向かった。
靴に履き替えて一度外に出て、校舎の内側へ回ったところに中庭はある。あたしがりょうの提案にイエスを出したのは、場所もよかったからだと思う。建物の角度的に太陽の光が良いバランスで入る中庭。校長先生が趣味で植えてある季節の花が綺麗に花壇に並んでいて、用事が無くてもここに来たりする程度には中庭が好きだ。
そんなお気に入りの中庭のベンチに、背の高い彼が座っていた。

「………あれ」

でもあたしが思っていた人と違うのが座ってる。あたしの存在に気付いたのか勢いよくこちらを振り向いたのは、りょうの友達であるてつやだった。あたしを見るなり、てつやはすぐに口を開く。

「りょう、ここに来る廊下の途中で顧問に呼ばれて…先に行くからって俺だけが来たんだけど……」

まだ聞いてないのに、りょうが居ない理由を教えてくれたてつや。納得して頷いたあたしは、りょうの姿を見なかったことによって緊張が解れたのかなんとなくホッとした。あたしは彼の隣に座る。

「すぐ来ると思う…」

「うん」

「食べてても良いって言ってた」

「分かった」

業務的な会話をしたあと、二人でお弁当を広げる。てつやのお弁当は二段で、下の段にはご飯がぴっちりと、上の段はおかずがぎゅうぎゅうに詰まっていた。

「美味しそうだね」

てつやは小さく頷く。

「お母さんが作ったの？」

また頷いた。それを見たあたしは俯(うつむ)く。相変わらず会話は盛り上がらないので、中庭に咲いてた花を眺めた。

犬、キミは可愛い人→←犬、嫉妬しない

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