君の犬になってもいいよ【東海オンエア】

犬、残光 ページ14

「A」

歩き出したあたしをりょうが追ってくる。歩みを止めないあたしの横に並んだ彼、まだ何かあるらしい。流石に通学路なので同じクラスの子達がちらほらと居る。これ以上ボロを出せないと半ばヤケクソであたしは口を開いた。

「ちゃんとりょうの友達とも仲良くするって」

「LINE教えて」

「えっ」

彼が何か言う前に先制攻撃したつもりが、見事なカウンターを喰らった。呆気に取られるあたしへ、りょうはスマホを取り出す。

「これ俺のLINE」

てきぱきと交換の手続きを踏まれ、あっという間に彼の連絡先があたしの手元に保存された。

「いつでも連絡してきてね」

「……うん」

なんとも言えない罪悪感に苛まれ、浅く頷いたあたし。横を通り過ぎようとしたあたしのクラスメイトが「おはようA」と声をかけてくる。彼女達におはようと返すあたし、目の前に立っていたりょうはあたしの友達にも小さく笑った。

「じゃあまたあとで」

それだけ言って、彼はまた何事も無かったかのように愉快な軍団の中に紛れていく。りょうが離れると、挨拶してきたクラスの子達があたしの元に駆け寄ってきた。

「りょうくんってやっぱかっこいいよね。Aには勿体無い」

「あたしもそう思う…」

「本当にどうやって付き合えたの？」

「あたしが聞きたいよ……」

「…は？」

呟いたあたしに友達は思わず苦笑いを漏らす。だって仲の良い友達に囲まれて、日々を楽しそうに過ごす彼。意地悪だと思ってたけど、てつやの言う通りもっと彼の事を知っていけばまた印象が変わっていくのかもしれない。

「よくわかんないけど、自信無いなら釣り合うように頑張るしかないね」

努力してと彼女達はあたしを慰めつつも、他人事なのでケラケラと笑ってる。あたしは彼を見るたびに話すたびに、偽彼氏チョイスを間違えたなと病んでいく。

「りょうに釣り合う女の子とかいるの？」

「付き合ってるんだから、釣り合ってるって思い込めばいいのに」

「向こうがどう思ってるか分からないし」

「朝からめんどくさいなぁ」

「友達なんだから解決に導いてよ！」

「うざー」

明るいクラスメイト達はあたしの彼氏が誰であろうが、もはやどうでもいいらしい。今更だけど本当に無駄なマウントを取ってしまったようだ。彼女達には嘘なんてつかなくても良かったと、吐いた後にそう感じた。
偽物彼氏のりょうやクラスの友達があまりにも光属性過ぎて、あたしは罪責感に押しつぶされたまま学校の門をくぐる。

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