剥離 ページ2
「本音すら言えない奴の事なんて、誰も分かるはず無いじゃん」
あたしの声は自分でも思ってた以上に低く落ち着いていて、美海の目の奥はもう彼女の涙でよく分からない。だがその余韻も残さずに、ふるふると震えながら美海は唇をきつく噛む。
「そんなもの、誰だって言えない……!」
悔しそうに歯を食いしばりポロポロと涙を流す美海。泣いたり怒ったり、こんなに感情を露わにする彼女は初めて見た。何も無いのにずっとニコニコしてるか、借りてきた猫みたいに弱そうにしてる所しか見たことがなかったからだ。それどころか美海の襟を掴んだあたしの手は砂塗れでドロドロで、彼女の制服も、綺麗に整えられた髪の毛も、いつも口紅で艶々してるコーラルピンク色した唇も、全部土で薄汚れてる。それでぐしゃぐしゃな顔して泣いてる。
これが気を張らない事だって、彼女は気付くだろうか。
「言う気無いなら、それならもういい」
そう言って立ち上がったあたしを、頰を濡らしたままの美海は目で追う。拳を軽く握り締めれば、手のひらに付いた砂で皮膚がザラッとした。それを指でなぞりながらあたしは口を開く。
「あと、エイジの事を好きだったのはあたしじゃ無くて、あんたでしょ?」
それを聞いた美海はまるでやかんが沸騰した時のように、カアッと顔を赤くする。そう思った時、右手をきつく握った美海が拳を振りかざした。
「あんたなんか、大っ嫌い!!」
美海の涙声があたしの鼓膜を激しく揺らしたと思えば、般若のような顔をした美海があたしに飛び掛かってくる。あたしは両手を下に降ろしてグッと歯を食いしばり、彼女に殴られる覚悟をした。
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やなぎ茶(プロフ) - 何年か前に大好きだった作品で、今みてもやっぱり素敵でした。 丁寧な文でありながらも、堅苦しくなく情緒的で文章が大好きです。それぞれのキャラクター一人一人が魅力的で、描写がリアルでのめり込んでしまいます。本当に大好きな作品です…! (10月15日 2時) (レス) @page2 id: 5b37ec5afa (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 不明さん» 優しさ溢れるお返事ありがとうございます☺️前作まで読んでくださっているんですね!私もお気に入りの作品なので、そう言っていただき嬉しいです^ ^ 他の作品でも楽しんでいただけるよう頑張りますね🔥💪 (2022年2月10日 21時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
不明(プロフ) - 匿名さん» 前作も読ませていただきました…到底言葉では言い表せないくらい素敵で泣きながら読ませていただきました。。一つ一つの描写が綺麗でつい感情移入してしまったくらいです…!(笑)ゆるゆるのびのびと気長にお待ちしております🙇🏻♀️(*^_^*) (2022年1月28日 0時) (レス) id: e97a2bc7ec (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 不明さん» 随分前に作ったこの作品を見つけてくださり、メッセージまで残していただきありがとうございます。とても嬉しいです!なのに未完成のままで申し訳ないです。。必ずとはお約束出来ませんが、期待に応えれますよう努力しますので気長にお待ち頂ければ幸いです(*´³`*) (2022年1月27日 20時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
不明(プロフ) - コメント失礼します…!まさにハラハラドキドキで読ませていただいております。。とても素敵な作品にお会いできて胸の高鳴りが止まりません!陰ながら続きを楽しみにしております…!! (2022年1月26日 3時) (レス) id: e97a2bc7ec (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2020年7月13日 17時