ソウイウノシンジマセン ページ6
なんだろう、からかわれているのか?顔をしかめたまま、あたしは彼に確認する。
「…隣、君しかいないんだけど」
「だよね」
はははと楽しそうに笑った空。そんな彼の様子に、何も面白くないと頭を抱える。
「隣にいる俺に話しかけてみたら?って事だよ」
「なんでそんなに朝から元気なの…」
「だって朝来たら、自分が狙ってた子が隣の席に移動してるんだよ。元気にもなるよね」
なんの抵抗もなくそんな言葉を吐けるなんて、逆にこちらが恥ずかしくなってくる。もはやアッパレと言えるぐらい雄弁な彼にペースを取られそうになり、思わず自分を奮い立たせた。
「でもあたし、お喋りな人って苦手なの」
「そうなの?なんで?」
ダメなものはダメなので何故と聞かれても困る。少し悩んでから彼とは正反対のタイプを例えに出してみる。
「落ち着いた人が好きだから」
「へぇ〜……変わってんね。でもつまんないじゃん、そんな男」
逆にどうしてと聞き返そうとした瞬間、扉が開いて担任が教室に入って来る。ふと教卓の方に目をやった時、エイジと昨日の彼女が話しているのが見えた。上手くいってるのか、どうなのか。まぁ、どうでもいいか……でも上手くいってないとそれはそれで、なんで席代わったんだって感じで腑に落ちないというか、なんというか。
「あれ、エイジの隣に居る女の子、昨日俺の隣に居た子だ」
「…ああ、そうなの」
「ほら、見て。美海ちゃんっていうの」
「見てって言われても昨日の席覚えてないし、いいから早く席戻りなよ」
「美海ちゃん、あいつの事好きなのかな」
「席戻りなって」
右足で軽く彼の椅子を蹴った。空は手を組んで悩むような仕草をしてみせる。
「Aはどう思う?」
「席に…」
「あの目は絶対そうだ。好きな人を見る目だ」
「…………」
「俺のこの目も、好きな目」
そう言ってキラキラと輝いた瞳であたしを見た彼は、こちらに歩いて来た先生の丸めた教科書で頭をパシーンとしばかれた。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー!(自分でも引くテンション)文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね?少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです!いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね(笑) (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ!!!!!私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年5月12日 8時