憤死 ページ46
高くに登った太陽が、苛立ちを引き連れるあたしの影を濃くする。横を並ぶ空は自販機で買ったコーラを歩きながら飲んで険しい顔をした。
「このコーラ、もうぬるいよ」
不味いと呟いた彼を横目に、あたしは駅の構内に入る前に定期を用意する。それを見た空もICカードを何処からともなく出した。夏休みの間はしばらくは来なくなるであろう駅の改札に定期券を通す。その後を追うように、ピッと高い電子音がして空も改札を抜けた。
「空、定期券買ってないの？」
「ほぼエイジのバイクだし、あんまり必要無いかなと思って」
もはや変な噂を立てられそうなレベルには仲が良いらしい。それなら彼が怒っている理由も分かりそうなはずなのに、彼は笑顔で分からないと言う。
「エイジは変だからね」
笑いながらそう言う空にあたしは溜息を吐く。そして階段でホームに上がるなり、咄嗟に目に入ったのは同じホームで電車を待つエイジと美海の姿だった。それを見た瞬間、あたしの心臓がギュウと縮む。
「…なんで、教室に居たのに」
横に並んでお喋りをしている二人を見つめた。まさかエイジを追いかけて走ったのか。彼女とすれ違わなかったので、もっと早い段階で学校を出たとしか考えられない。そんな事よりも。
「エイジだ」
二人の方を指差して呟いた彼の手を、あたしは物凄い勢いではたき落とす。
「分かってる。指ささないで」
「なんか仲良さげ」
「あの二人、席隣同士だし」
「エイジが女の子と二人で帰ってるの珍しいよ」
ヘラヘラしてる空に、なんとも言えなくて黙り込むあたし。
「なんで一緒に帰ってんだろ」
空は不思議そうに彼等を眺める。
「席が隣だからじゃん…」
「俺とAみたいに？」
「空が勝手についてきてるだけだし」
「え、ひどくね？」
同じ番号のホームにいるということは、簡単に言えばあたし達が全員同じ電車に乗るということだ。
さっきまで意味不明に怒ってたくせに、もう笑ってるよ。そう思うとなんだかイラついて、あたしは強引に空の腕に自分の腕を絡めて言った。
「今から、一言も喋らないでね」
「え？なんで…」
「いいから黙ってて」
怪訝な顔をした空を引っ張って行き、あたしはわざと彼等の隣に並んだ。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
