新たな魅力に気付く ページ45
SIDE.EIJI
そう、俺はうんこだ。
本当に最低最悪な態度だった。でもAは空の事が好きなんだから、ご飯に行くなら二人で行けば良いと思ったからああ言った。それにしたってもっと柔らかい言い方があった筈なのに、気持ちと言葉が噛み合わなくてあんな妙な口調になってしまったのだ。八つ当たりされた時の空とAの顔を思い出しては、俺は"うがーっ"と暴れたくなる。だけどそうもいかず、髪をぐしゃぐしゃにしながら横断歩道を渡ろうとした、その時。
「危ないよ」
突然がくんと体が後方に傾いた。勢い余って首が変な方向に捻れた俺の目の前を、大型のトラックがクラクションを鳴らして通り過ぎる。びっくりして信号を見上げればライトは赤色に発光していた。もしあのまま渡ってたらあんなでかいのに轢かれてた。
「大丈夫？」
後ろから聞こえた声に振り返った俺は口を噤む。
「ボーッとしてたら轢かれちゃうよ」
また隣の席の子、美海だ。この子が現れると変な事が起こるから嫌なんだよなと思いつつも、助けてくれたことに変わりは無いのでとりあえず「ありがとう」とだけ言う。そして彼女の返事を待たずに、俺はまた視線を前にやった。
「考え事してたの？」
てかさっきまで教室にいたのに、どんなスピードで歩いたら俺に追いつくんだろう。
「トラックの運転手さんが変な人じゃなくて良かったね」
少し前にショッピングセンターで鉢合わせた、この前用も無いのに俺を呼びに来た、加えて席も隣。この遭遇率は異常だ。倍率は驚異の1.25倍。ドラクエでいうところの、スライムぐらいの頻度で彼女と出くわす。彼女がいるところに俺がいるのか、はたまた俺がいるところに彼女がいるのか。
「あたしも家こっちなんだぁ〜」
俺が無視しても、何故かめげずに話しかけてくるスライムをスルーしながら、信号が青に変わった瞬間歩き出す。
「エイジくーん？」
「……………」
「ねぇ、待っ……きゃあ！！」
隣を歩いていた彼女が悲鳴をあげて、まるで漫画のような転び方をしたのが横目に見えた。放っておこうかと思ったけど流石にそれは出来ず、やれやれと美海の元に駆け寄る。
「何してんの」
「いったぁ……」
一体何に躓いたのかと辺りを見回すけど、道路は見事なまでにきちんと整備されていて、より彼女が何で転んだのか分からず恐怖が増す。
「なんで何もない所で転ぶんだよ」
もはや怖さを飛び越えて面白かった。思わず吹き出せば、美海も照れ臭そうに微笑む。
「自分の足に躓いちゃって」
控え目に言った彼女のその台詞がまた面白くて、俺はもう一度笑った。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
