狸になった俺と俺の机 ページ42
SIDE.EIJI
返事は、怖くて聞けなかった。
思い切って彼女に尋ねた質問は、自分で踏んでも爆破する地雷になりそこなったのだ。俺はサイドミラーに映っていたAの横顔を思い出す。彼女は一体どんな事を考えて、どんな気持ちで、俺の後ろに乗っていたのだろう。
「……………やば」
昨日の事を考えるだけで吐き気がする。いっそのこと学校を休んでやろうかとも思ったけど、あの程度の事で休むのは流石にキモい。だからちゃんと今日も朝から学校に来た。
「昨日なんで先に帰ったんだよ」
登校してきて俺の席に来るなり、鞄も持ったままでそう尋ねてきたのは空。彼は不満気に俺の机に座る。
「朝も迎えに来てくれなかったし」
「俺はお前の彼氏じゃねぇから…」
「エイジが来てくれなかったから遅刻しかけた」
「してないからいいだろ」
「走ったの！めっちゃ！」
教室に響きそうなぐらい叫んだ空。朝から無駄に元気な空を尻目に、俺は机に寝そべって目を閉じる。空は何があっても元気そうで羨ましい。暫くは、なるだけ気配を殺していよう。
「空、あたしの自転車は？」
タイミングを狙ったように、今日だけは聞きたくなかったAの声が鼓膜を揺らす。同じく彼女の声に、別の意味でギョッとしたのか空が机から離れる気配がした。
「あ、自転車！」
「忘れたの？」
彼女の声が徐々に近づいて来る。俺のひたいと机が、まるで接着剤で固定されたように動かなくなる。
「いや、あるよ」
「どこに？」
「…それは、俺の家に」
「はい！焼肉ね！」
彼女の嬉々とした声。その次に空の落胆した声。狸寝入りをかます俺の頭は鉛のように重くて持ち上がらない。
「どこ連れてってもらおうかなぁ」
「朝起きた時は覚えてたんだって」
「でも約束は約束だから」
「手にも自転車って書いてたのに。ほら」
二人の声が遠ざかっていく。話し声が聞こえなくなっても、授業のチャイムがなっても、未だ俺の頭は上がらない。もういっそ今日は下を向いたまま過ごす日にしても良い。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
