シークレット ページ36
SIDE.XXXX
生理だと言って体育を休んだ。本当は少し前に終わったばかりだったけど、先生がいちいちあたしの周期を把握している筈など無い。そうなると見学の理由は明確。外でボールを追いかけるなんて、肌が焼けるしその上詰まらないし参加したくなかったのだ。
体育で誰もいなくなった教室で、あたしはゴミ箱の前に立ち尽くしている。この前、彼と彼女が二人で居るところを見てあたしは頭の中がフツフツと音を立てて沸騰した。でも本人の目の前で何をどうこうするつもりなど微塵も無かった。
スカートのポケットに入っているのは彼女のシャーペン。彼から預かったまま返すことなく、今までずっとポケットの奥底に入れていた。歩くたびにペンの先が太ももに当たり鬱陶しかった。
ペンを取り出したあたしはそれを両手で握りしめる。親指で支えながら他の指で徐々に力を込めていくと、ペンがミシミシと音を立てた。あたしはペンの真ん中をじっとりと見つめる。そして指に加わる反動を無視して勢いよく半分に折った。ボキッといい音が鳴って、抉れた中身が飛び出し細かい部品が床に落ちる。ペンの中は、あたしが見ても何がどんな仕事をするのか分かるぐらいシンプルな構造だった。真っ二つになったペンの破片をゴミ箱に放った。
「ざまぁみろ」
ゴミ箱を見下ろして呟く。その時ふと廊下に人の気配を感じて、姿勢を低くしたあたしは机の陰に身を隠した。どうせ見回りの先生か何かだろうと、人影が去るのを待つ。
「大丈夫?」
だが突然声を掛けられて、あたしはハッと勢いよく頭をあげた。先生じゃない。あたしの顔を不安そうに覗き込んでいるのは空君だ。
「体育は?気分悪いの?」
雑に捲り上げられた体操服の長ズボンの足元をチラリと見る。確か男子は体育館で授業だったはず。
「保健室行く?」
尋ねてきた彼にあたしは軽く頭を振った。
「大丈夫だよ、ありがとう…」
「体育は見学?」
「うん。空君はどうしたの?」
「いや、今日の体育で筆記用具使うの忘れてて、エイジに借りようとしたら自分の取ってこいって怒られてさぁ」
それで来たの、と彼らしい感じでヘラヘラしながら言った。もしこれがエイジ君だったら、彼は妙に目ざといので何か勘付かれたかもしれなかった。バカっぽいこの人でよかったと思いつつも「戻らなくていいの?」と空君に聞く。
「あ、そうだった。行くわ」
「うん。転ばないように気を付けて」
あたしの言葉に微笑んだ彼は筆箱を片手に、ピューンと音が出そうなぐらいの速さで廊下を駆けて行く。その後を追うようにあたしも教室を出た。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー!(自分でも引くテンション)文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね?少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです!いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね(笑) (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ!!!!!私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年5月12日 8時