エイジは嫉妬しない ページ30
SIDE.EIJI
「空、帰ろう」
終業のチャイムと同時に鞄を持ち、離れた席の空を誘う。すると空はふとAへ目をやり、そして俺に視線を戻して「ごめん、先帰ってて」とだけ言った。
「……………」
「ちょっと用事あって」
そう言いながらまたAを見た彼。Aも空と同じように、空の方を見てから俺の方へ目をやる。
「………分かった」
返事をした俺は鞄の紐をきつく握って彼等に背中を向け、バイバイと言った空に何も言わずに教室を出た。心臓が異常な程脈打ってる。
なんだこれ、変な俺。小学生じゃないんだからこの態度はないでしょって思いつつも、ズカズカと廊下を歩いた。
クラスの誰よりも早く下駄箱に向かい、靴を履き替えてさっさと学校を飛び出る。ローファーのかかとを踏みつぶしたまま歩く。怖い顔をしてただ歩く。どんどん早歩きになって、競歩みたいに膝を曲げることも忘れそうになった時「待って」と後ろから呼び止められた。俺は直ぐに振り返る。
そこにいたのはA、じゃ無い。俺の目の前で、はぁはぁと息を切らしているのは美海だった。
「エイジくん、早い……っ」
「…………」
肩で息をする彼女を見下ろした俺。なんだよと思ったけど、それを聞く前に彼女が口を開いた。
「エイジくん、先生が、呼んでたよ」
途切れ途切れにそう言った彼女。
「…なんで？」
「なんか、分かんないけど…あたし、呼んできてって言われたから」
美海は心臓に手を当てながら話す。呼吸を整えようと彼女が頭をあげると、その細い肩を伝ってさらりと落ちた黒い髪の毛。
ああ、コンビニに停めてたバイクでも見つかったかな。そうだと少し面倒臭い。思わず出そうになった舌打ちを堪えて美海に目をやる。
「わざわざありがとう」
「いやっ、全然、いいの…！」
頭を大きく左右に振った彼女の隣を過ぎ、俺は戻りたくもない学校に方向転換する。俺と真逆の方に歩く生徒達の間を通り抜け、さっき通ったばかりの門をまたくぐろうとした時、反対側の道路に仲良く並んで歩くAと空の姿が見えた。
「………………」
"ああ、もう"。下唇をきつく噛み、頭の中でそう呟く。彼等に背中を向けた俺は陰鬱とした気持ちを抱えながら、放課後が始まったばかりの学校の中へ入って行く。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
