隣の席の君 ページ3
詰まらないと文句を言っていた彼だが、結局その後決まった席の隣になった女の子と仲良さげに話してた。押しが強いけど、物怖じせず向かっていく所は物凄いコミュニュケーション能力だなと思いながらも、あたしは彼の事を特段に留めなかった。
あたしの席は念願の窓際…なんてそう上手くいかず、残念な事に廊下側から一つ離れた前から４番目の席になった。前後左右誰も知らないし、席も微妙。ここは潔く前の自分を捨てて新しい気持ちと新しいキャラでいこうかな。とか思っていると、隣の人に声を掛けられる。あたしは右側に視線をやった。
「ごめん。ペン貸してくれない？」
先程あたしに話しかけてきた"空"とは少し違った控え目な雰囲気の彼は「筆箱忘れちゃって」とあたしの目を見ずに言った。
「シャーペンでいい？」
「うん、何でもいい」
筆箱から出したシンプルなデザインのペンを渡す。シャープペンシルを受け取った彼は「ありがとう」と呟いて机に向かい、小さな紙に何やら文字を書いている。そして先生をちらりと見た後、その紙を誰々に回して欲しいと後ろの席の子に渡した。あたしは黒板に向き直り、頬杖をつく。今日のスケジュールみたいなのを話す先生の言葉を右から左へ受け流しつつ、気の合いそうな子居るかなと教室を見渡した。
すると右隣の彼が回した手紙が、空の元へ辿り着いていることに気付く。手紙を受け取った空は紙を開きながらこっちを見た。でもあたしを見たんじゃなくて、あたしの隣にいる彼を見たんだと思う。
そして紙に目を落とし微かにニヤけた彼は、サラサラとペンを動かして躊躇うことなく丸めた紙をこちらに向かって投げた。驚いたように目を丸くしてそれをキャッチした隣の彼は、空に向かって「投げるな」と口パクで言った。
「そんな感じで。明日から早速授業開始だから、各教科の教材忘れないように！」
先生の一際大きな声で、あたしはハッとする。彼等のやり取りを眺めていたお陰で殆ど聞いていなかった。前の席から来たプリントの束を受け取り、一枚残して他は後ろに回す。
「あと、エイジと空。お前らがコソコソなんかしてるのも見えてるからな」
そう言って彼等を順番に指した先生。微かに教室に笑いが起きたが、あたしは気にする間もなく時計を見上げた。もうあと数秒で鐘が鳴る。
「すいませーん」
空が軽々と謝る声が部屋に響いた。隣の席の子はえいじという名前らしい。変わった名前だと思って入れば、終業のチャイムが鳴った。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
