後ろに乗せて ページ20
言われた通りローソンに行くと、コンビニで何か買ったのか二人が袋を持って店から出て来た。店の前には一つしかバイクが停まっていなかったので、自転車に跨ったままそれの近くへ寄る。コンビニコーヒーであろうプラスチックの容れ物を持ってこちらに歩いて来た空に尋ねた。
「どうするの」
「俺映画観たい」
「そうじゃなくて、自転車」
「ああ、そっち」
笑いながら、カップの縁に口を付けてコーヒーを飲んだ空。液体を飲む彼の喉仏がこっくりと動く。あたしはそれを眺めながら自転車を降りた。
「俺がAの自転車に乗るから、エイジの後ろ乗って。メットそこにある」
「え？」
「ヘルメット、椅子の中にある」
「いや、じゃなくて、どういう事？」
意味が分からなくてもう一度聞いた。
「安心してください。安全運転します」
ふざけた様子で親指を立てたエイジに"違う違う"と顔を歪めたが、既にあたしの自転車に跨っていた空が「時間なくなるし行こう」と右手にカップを持ったまま言う。それに軽い返事をしたエイジ。メットインスペースからヘルメットを取り出し、あたしに手渡してくる。男が被るには可愛らしすぎるキャラクターデザインのそれを受け取った。女の子乗せるのかなと思いつつ、自分もヘルメットを被ったエイジを目で追う。
「乗って。ちゃんとメット被ってね」
バイクに跨ったエイジがあたしを呼んだ。空は先に道路に出てあたし達を待っている。
「二人乗り？これ原付だよ」
「二種だからいいの」
にしゅ。と言われても意味が分からなかったけど、もうどうでもいいやとあたしは半ばヤケクソでヘルメットをして後ろに乗った。広い背中、至近距離にあたしは心臓の鼓動を速くさせる。だが乗ったはいいけど、どこに手を置けばいいのか分からない。困っているとエイジが「腰に手回して」とあたしの腕をぐっと引いた。体が前に倒れて、ピタリと体が引っ付く。ふんわりと香った柔軟剤のような匂いに耳の先が熱くなってくのが分かった。
「そんなにちゃんと掴まなくてもいいけど、離すと危ないからね」
慣れたように言った彼。ハイと小さく返事をして、あたしは彼の制服の、骨盤辺りを軽く握った。付き合ってもないのにこんなに近づいてもいいのかな、とか考えつつ心臓の音が伝わらないように上半身を少しばかり彼から離す。
「行くよ」
エイジの声が聞こえたと思った瞬間、ぐんと体が後ろに持っていかれ倒れそうになる。慌てて服を掴み直した。さっきまでウジウジ考えていたのは何だったのか、冷や汗をかいたあたしはきつく彼の腰に手を回した。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
