裸足で逃げる ページ17
「放課後残ってプリント２枚」
あたし達を見下ろした先生はそう言う。あのあと屋上を出て、校舎をうろついていた所を捕まったのだ。
エイジは少しばかり暗い表情で反省してる顔をしてたけど、あたしは反省のハの字も見せなかった。叱責する先生の顔を見つめながら、違うことを考えていた。誰がいつどこで何をしていようが、そんなものは自分の勝手じゃない。授業中に迷惑をかけた訳じゃないし、騒いでないし、人を殴ったりした訳でもない。こんな風に屁理屈を考えていれば、話はいつの間にか終わっていた。
「ちゃんと残れよー」
「はぁい」
気の抜けた返事と共に職員室を出た。あたしは自分の後に部屋を出て、扉を閉めたエイジに笑う。
「ここの学校って、プリント二枚で授業サボれるらしいね」
くだらないとあたしが言うと、彼は複雑そうな顔をして目線を下にやった。
「なんか、先生の言うこと素直に聞かないってちょっと馬鹿みたいだけど、譲りたくない時ってあるじゃん。気分とか」
あたしは笑いながら、あたしの背中を追ってくるエイジに告げた。先生に刃向かうのは、甘えてるからなんだよってママに言われた事をなんとなく思い出す。その意味がイマイチ分からないあたしは、まだまだ人に甘えたいんだと思う。そりゃあそうだ。どうでも良い事を全力でしたいし、どうでも良いはずなのに絶対譲りたくないものを沢山持っていたい。それが出来るのは今のうちで、大人になると出来なくなっちゃうんだから。
「俺も、譲りたくないものってある」
小さな声でエイジがそう呟く。絶対否定されると思っていたから、彼に同意されたという事実になんとも言えない心地良さを感じつつ後ろを振り返った。
「俺だったら、あんな子達がいる教室に戻りたいと思わないし」
彼は強い瞳で真っ直ぐあたしを見つめてた。目が合ったその瞬間、エイジがあたしの肩をがっしりと掴む。その強さに驚いて目を丸くしたあたし。
「クソみたいなプリントさっさと終わらせて、帰りにどっか寄って帰ろう」
「……え、どっか寄るって…あたしと？」
頭の中で整理するように聞けば、エイジは大きく頷く。
「そう。とにかくどっか行こう」
エイジの声が廊下に大きく響いて、二時限目が終わるチャイムの音も響く。肩から手が離れたちょっと後に、あたしの返事も校内に響いた。
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匿名(プロフ) - 花亜茶さん» コメントありがとうございます。一応お話のコンセプトは"キラキラキュンキュンのラブストーリー"なのですが、何故か徐々にどんよりが我を出してきます^ ^ 可愛らしいのを書けないのは少し淋しいですが、そう言って頂けてとても嬉しいです。更新頑張りますね！ (2018年8月20日 17時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
花亜茶(プロフ) - 良作だー！（自分でも引くテンション）文がとても丁寧でストーリーの…雰囲気、ですかね？少し暗めな日常、個人的に凄く好ましいです。更新楽しみにしています。 (2018年8月20日 5時) (レス) id: e8e5b340c9 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» お久しぶりです。度々コメントありがとうございます^ ^ 少し前に本で読んだのですが、シリアスなお話が好きな方は案外根っこが明るい人が多いそうです！いつもポジティブなので、たまには暗〜い気持ちになりたいのでしょうか。…本当かな、不思議ですね（笑） (2018年5月22日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんの新しいお話だ！！！！！私も何故かハッピーエンドよりバッドエンドの方が好きなんです笑 (2018年5月12日 17時) (レス) id: 6bd4d1b707 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2018年5月12日 8時
