このシュートを決めたら°tomoyan ページ34
▶︎ともやん
湿気のこもった昼休みの体育館にボールをつく二つの音が響く。服の真ん中を掴み濡れた肌を乾かすように引っ張って煽いだあたしは、ジャンプシュートをストンと軽く決めたともやんの広い背中を目で追った。
バスケットボールを覆う彼の骨ばった手、シャツの隙間から見える鎖骨、首筋を伝う透明の汗、雑に掻き上げられて乱れた髪、全てが好き。
「見過ぎやろ」
熱烈な視線に気づいたらしい、こちらを振り向いた彼がふっと鼻で笑う。
「めっちゃ視線感じるんやけど」
「かっこよくて見惚れてた」
「ええって」
あたしの告白とも取れる…とはいえ、通常運転で交わす軽い冗談をいつものように流した彼は体を違う方向にやった。
「見てるだけじゃうまならんで」
「分かってるけど、上手い人って無意識に見ちゃうんよ」
それを聞いた彼は何を言うわけでもない、ただ小さく笑った。何も言われないとそれはそれで恥ずかしくなってくる。
彼からゴールの方に体を向けたあたしは持っていたバスケットボールをタンタンとついて、遠く離れたゴールに向かって勢いよくスリーポイントシュートを打った。だが決まらない、というか決まるわけがない。彼と話した直後のあたしは自分史上一番にバスケが下手になるからだ。二番目はともやんが他の女の子と楽しそうにしてる時。彼に影響されるバスケは思い通りにいかずむしゃくしゃする時もあるが、彼に影響されるからこそ上達することもある。
「もしこのシュート決まったらさぁ」
そこまで言いかけ、今まで隣でシュート練習をしていたはずの彼の姿が無くなっていることに気付き言葉を止める。
体育館の出入り口で、彼と同じクラスの女の子達がきゃぴきゃぴとはしゃぎながらともやんを囲っているのが見えた。いつの間に来たんだろう。気持ちを持て余すようにボールを腕の中でくるくると回したあたしは彼等から視線を逸らす。
「"友稀くんかっこいい。なんでそんなにバスケ上手いん？"」
楽しそうに笑う彼女達がともやんに言っているんだろうなというセリフを脳内で創り出すが、聞こえないので真実はわからない。
なんだか頭の中がごちゃごちゃしてくる。深呼吸をしたあたしは体育館の床にバスケットボールを強く打ちつけ心を整えた後、またシュートを打った。
「"友稀くんおるやったらバスケ部のマネージャーやろかな"」
「"私にもバスケ教えてほしい"」
「"一緒に試合見にいこやぁ"」
雑念と共にあたしが放ったシュートはリングをくるくると伝い回り、入ることなく床に落ちた。こめかみに垂れてきた汗を手で乱暴に拭いボールを拾いにいく。
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名無し85578号(プロフ) - どばししょうのお話好きすぎます（т-т）そもそも書く人が少ないのですごい嬉しいです（т-т） (4月21日 3時) (
レス) id: cb5a427560 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - りを。さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。としみつくんにはお話の中でギターを持たせがちな私ですが、音楽以外のお話も面白そうですよね…！色々考えてみます^ ^ また是非覗きにきてくださいね！ (2022年1月10日 1時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
りを。 - とっても面白いです♪ としみつのお話もっとみたいです！！ (2022年1月7日 18時) (レス) id: b34e0ddef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2021年12月25日 23時
