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だってやまとくんがびっくりするぐらい真剣な表情をしてあたしを見下ろしていたから、あまりにも予想外で面食らったのだ。あたしと彼との近い距離感を意識したら、一気に頭の先から足の先までぎゅんと体が熱くなる。
「A」
こちらを見下ろす彼に名前を呼ばれて、あたしは緊張のあまり生唾を飲んだと思う。でもそんなことなどお構いなしに、背の高い彼が一歩踏み出してあたしの頬に手を伸ばそうとしてくるのが見えた。
「…………」
でも触れはしない。指先は肌に当たる寸前で止まって、それが余計にあたしを焦らせた。静かな住宅街に並ぶ街灯の光が立ち止まる二人を照らし、重なる影の縁を際立たせる。
「……………」
「……………ふっ」
お互いに見つめ合って数秒後、堪えきれずに吹き出したあたしは彼の肩を軽く小突いた。
「やだやだ、やめよう！この変な雰囲気耐えられない」
後から思い出すと、この発言は限界まで来た照れ臭さを吹き飛ばす為に咄嗟に言ったものだったと思う。それを見たやまとくんがふと何かを言おうとしたけど、打ち消すように笑って「確かに」と口先で言った。
「右手の拳がまだ痛い」
呟いてまた歩き出す。あたしも隣を続いた。
「赤くなってるね。痛いの痛いの飛んでけ〜してあげよっか」
「やだよ」
彼の拳を触ろうとしたあたしの手を避けて掴んだ彼はそのままグッと内側に引く。歩道側に居たやまとくんと、車道を歩くあたしとの立ち位置が変わった。だからこういうのがあたしを揺れ動かすのに、やまとくんは知っててやっているのだろうか。黙って右側を歩く彼を見上げて尋ねる。
「やまとくんってあたしのこと好きなの？」
あんまりにも直球だったが、それがよかった。彼は気にする素振りすら見せずに首を傾げる。
「なんで？」
「なんとなく」
「んー、多分」
誤魔化す気があるのかないのか、顎に手を添えて口角を上げた彼。「ふぅん」と返事をしたあたしに今度は彼が聞く。
「Aは俺のことすき？」
「うん。好きだよ」
「え、ほんとに？」
「いつ頼んでもシフト変わってくれるからね」
あたしの面映ゆい気持ちを見透かしたのか、そっちかよと微笑んだやまとくんは楽しそうだった。あたしも楽しくなって笑った。
それからはもう深入りしない。互いの肩がくっ付いては離れて、くだらない事で笑い合うたびに歩幅が揃い、もう何も聞かなくても双方の気持ちが分かっている気さえした。あたし達はいつものように、澄んだ空気の夜道を二人並んで歩いて行く。
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名無し85578号(プロフ) - どばししょうのお話好きすぎます（т-т）そもそも書く人が少ないのですごい嬉しいです（т-т） (4月21日 3時) (
レス) id: cb5a427560 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - りを。さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。としみつくんにはお話の中でギターを持たせがちな私ですが、音楽以外のお話も面白そうですよね…！色々考えてみます^ ^ また是非覗きにきてくださいね！ (2022年1月10日 1時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
りを。 - とっても面白いです♪ としみつのお話もっとみたいです！！ (2022年1月7日 18時) (レス) id: b34e0ddef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2021年12月25日 23時
