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いつもの朝とは違う反対側のホームに昇り、あたしがさっきまで電車を待っていた乗り場を遠くから眺める。
「…なんか変な感じする」
言葉通り、なんだか妙な感覚だった。既に椅子に座っていたゆうたが頷く。
「こっち側のホーム、ほんと人居ないよなぁ」
「そりゃあ都会の方に行くやつと田舎の方に行くやつだから」
「なんだそれ」
「だってさ、こっち側は……」
電車の向かう方角を説明しようとして、あたしはふと彼が手ぶらで椅子に腰掛けていることに異変を感じる。
「てか、ゆうた鞄は？」
背もたれに深くもたれたゆうたは、空を見ながら何でもないように微笑んだ。
「多分玄関に忘れた」
「本当に言ってる？」
「まぁ、ここに無いからそうなんだよ」
「怖いよ。さっきからなんでそんな余裕なの」
「財布とスマホはポケットだし、鞄に何も入ってない」
持っていく意味はないねと目を細めた彼は、さっきからずっと楽しそうにしてる。なんでこんなに自由なんだろう。もはや驚きを通り越して羨ましいかもしれない。
そんな彼を呆れながらも見つめるあたしは、いつの間にか自分がワクワクしていることに気づいた。眠たそうにあくびをしたゆうたの隣に座り、青く澄んで晴れた空を見上げる。春の香りがする心地良い風が吹いてあたしの髪をふんわりと撫でた。駅の屋根にとまっている二羽の鳩も、のんびりと寄り添っている。
「なんか…このままここでボーッと空見てるのも悪くないかも」
「んー、いいね」
「なんかあったかくて眠たくなってきたし」
「俺も」
「……でも、気向いたら学校行く？」
「いいよ」
彼はあたしの言葉に全て肯定して、また小さなあくびをしてから椅子に置いていたあたしの手をぎゅっと握ってきた。そしてぽつりと呟く。
「手ちっさ」
あたしはそれを鼻で笑って手を柔く握り返す。
「手でっか」
「ふふ、真似すんな」
低い声とスローペースなやり取り。彼の決して目には見えない静かな思いやりはあたしの心をゆるりと溶かしていく。
「なんか、ゆうたって優しいよね」
「何急に」
「いや…電車来たらそれに乗って、端っこの駅まで行こうねってこと」
あたしの言葉に「いいよ」と笑顔のまま頷いた彼は、手を握りしめたままウトウトし始める。その横顔を眺めて笑ったあたしも、優しい気持ちで瞼を閉じた。
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名無し85578号(プロフ) - どばししょうのお話好きすぎます（т-т）そもそも書く人が少ないのですごい嬉しいです（т-т） (4月21日 3時) (
レス) id: cb5a427560 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - りを。さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。としみつくんにはお話の中でギターを持たせがちな私ですが、音楽以外のお話も面白そうですよね…！色々考えてみます^ ^ また是非覗きにきてくださいね！ (2022年1月10日 1時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
りを。 - とっても面白いです♪ としみつのお話もっとみたいです！！ (2022年1月7日 18時) (レス) id: b34e0ddef0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2021年12月25日 23時
