03 ページ24
それを察したのか、あたしの手を掴んだまま珠希也はフッと鼻で笑う。
「起こしに来てくれたんでしょ？Aも一緒に寝てどうすんの」
「だって起きないじゃん」
「起きてたよ」
普段教室で見せる横暴な彼とは打って変わって、怖いぐらい優しい物言いにあたしは返す言葉が思いつかなくなる。
「起こしに来るだろうなって思って」
待ってたらやっぱり来たと笑って言った彼の指が緊張して強張ったあたしの指にするりと絡まる。彼が触れている指の先だけに体温がじわっと集まってきた。
「授業つまんないしさ、ずっとこうしてようよ」
独り言のように言って、試すような視線であたしを見上げた珠希也。目を逸らせないあたしの指先は、ジリジリと燃えるように熱い。
きっと誰も来ないよと彼がつぶやく。あたしだってそう思う、あたしもそうしたい。
唇を強く噛んで、首を縦に振ろうとした瞬間「なんてね」と笑った珠希也は起き上がった。スルリと離れた指、あたしは呆気にとられる。
「悪いこと考えてたでしょ？駄目だよ」
そう言って伸びをした彼はダルそうに教室を出ていく。
「もー、なんなの！」
せっかく起こしに来たのにと叫ぶあたしに珠希也は「ありがとう」と笑う。そうやってギャップ見せられると、いつも許しちゃう自分に呆れつつも彼の背中を追いかけた。
「授業行くの？」
「行く。Aが悪いことばっかする奴、嫌いだって言ってたから」
さっきのセリフ、結構ダメージ喰らってたんだなと思いつつもあたしは溜息を吐いた。
「あのねー、授業出ないと一緒に卒業できないんだよ」
「だって本当につまんないやん」
「分かるけど、体育だけ出てもしょうがない」
「ならAが俺に勉強教えてよ。それだったら授業出なくていいし、ずっとAと一緒にいれる」
どんだけ甘えられても今度は流されない。あたしは持っていた教科書で彼の腕をパンとはたいた。
「バカは嫌いなのっ」
「えー……じゃあ好かれるためには頭良くならないとダメなの」
「分別のついたバカならいいけど、ついてないバカは嫌だってこと」
「意味分かんないけど、Aちゃんやっぱかわいいね」
絶対俺のこと置いていかないし、と付け足した珠希也はヘラヘラしながら廊下を歩く。本当は自分があたしに好かれてることなんて、とっくの昔から知っているくせに。からかいやがってと思いつつも、あたしは笑顔で彼の空いていた右手を取った。
「勉強、教えてあげてもいいよ？」
そう言うと、彼はあたしの手を握り返して嬉しそうに笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 102人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
名無し85578号(プロフ) - どばししょうのお話好きすぎます（т-т）そもそも書く人が少ないのですごい嬉しいです（т-т） (4月21日 3時) (
レス) id: cb5a427560 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - りを。さん» コメントありがとうございます！面白いと言っていただけて嬉しいです。としみつくんにはお話の中でギターを持たせがちな私ですが、音楽以外のお話も面白そうですよね…！色々考えてみます^ ^ また是非覗きにきてくださいね！ (2022年1月10日 1時) (レス) id: c0fa65fbb4 (このIDを非表示/違反報告)
りを。 - とっても面白いです♪ としみつのお話もっとみたいです！！ (2022年1月7日 18時) (レス) id: b34e0ddef0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：匿名
| 作成日時：2021年12月25日 23時
