⇒大人02 ページ45
「俺今から帰るんだけど、ついでに送ろうか?」
尋ねるなり、打って変わってきらりと光る彼女の顔。
「え、いいの?」
「いいよ」
頷いた俺に「らっきー」と力の抜けた拳を上げた彼女だっけど、何故か起きあがろうとしない。車の鍵をポケットに突っ込んだ俺は、眠そうに目を
「A起きて。行こう」
「うーん…行くけどさ、おんぶして」
「ええ、なんで」
「飲み過ぎたし床も硬いし頭重いし、体がギシギシして起き上がれない」
「も〜、子供じゃないんだから……」
子供がぐずった時みたく、手を差し出して俺を待つ彼女の元へ仕方なしに向かった。寝息を立てて眠るメンバー達を踏まないように、俺は彼女の腕を取る。その瞬間、俺の服を物凄い力でAが引っ張った。
「うわ!」
何をするんだという間も無く、勢いよく足を滑らせバランスを崩した俺は咄嗟に床へ手をつく。Aの隣に寝ていたゆめまるが唸り声を上げて寝返りを打った。
「あっぶな…!」
押し潰すところだったと驚いて彼女を見下ろしたが、Aは口角を上げてこちらを見てる。
「へへ」
悪戯っぽく笑ったA、アルコールのせいか火照った顔をしてる。そして離れようとした俺の腕を取った。
「一回だけしようよ」
そう言って微笑んだAからは、柔軟剤と共に強いお酒の匂いがした。彼女はお酒が飲める大人だ、そして俺も大人だ。彼女が何をしたいと誘ってきてるのかぐらい考えなくてもわかる。微かに唇を噛んだ俺は溜息を吐いて頭を左右に振った。
「しないよ。酔い過ぎだって」
「うーん、だよね」
目を細めて大きく伸びをした彼女。何も無かったみたく笑ったのを確認した俺は、内心めちゃくちゃホッとした。タオルケットを雑に畳む彼女に尋ねる。
「どれぐらい飲んだの」
「ゆめまると虫さんに勝つまで飲んだ」
「すご、海賊やん」
「飲める時に飲まなきゃね」
嬉しそうに言って、Aはゆっくりと起き上がり玄関へ向かう。
「今度はてつやも一緒に飲もうね」
サンダルに足を突っ込んだAは、きっとまた普段と同じ顔で俺の前に現れる。俺も、いつもと変わらない態度で彼女に接する。良い意味で大人、悪い意味でも大人な俺達。
「眠いから早く帰ろ〜」
おぶってと言った弱々しいAはどこへやら、もはや普通に歩く彼女の凛々しい背中を追いかけた。
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時