金澤先輩がうるさい02 ページ5
私の指差した先、吹き出しのところに『うるせぇ』と書かれたうさぎを見下ろした金澤先輩。それを見るなり一瞬でイラっとしたような顔をした彼は、物凄い勢いで消しゴムを取り出してうさぎを消した。そして私を見つめて目で何かを訴えてくる。
「冗談なのに」
ニヤニヤと笑いながら言えば、先輩は小さく舌打ちをした。
「言っとくけど僕は2つも先輩」
「そうですね」
「そしてAは後輩だ」
「はい」
「うるせぇは確実に無い」
「私、間違った事書いてません」
そう言い返せば口元を歪めた金澤先輩は「かっわいくない」と強めに言った。唐突に放たれた彼の言葉にムッとした私も悪態を吐く。
「可愛くなくていいです」
「それは残念。もっとニコニコしてて愛想あれば、僕の好みだったのにね」
「……………は?」
「…………………」
「……………………………」
「ねぇ、目の前でイチャつかんで?」
唐突に聞こえた声に私達は肩をびくりと跳ねさせた。後ろからそう言ったのは副会長のりょう君。机に頬杖をつく彼は「いつ見ても仲よさそうに喧嘩するよね」と呆れたように笑った。そんな風に思われていたのかと意識した途、カァッと上半身に血がのぼる。
「そんなんじゃないです!」
机の上に置いてあったノートをバンと叩く。少しばかり目を丸くした会長だったが、彼は取り繕うように大きめの咳払いをした。
「私語厳禁」
「……すいません」
彼に謝って小さくなった私に、後ろにいたりょう君が微かに吹き出す。
「何笑ってるんですか…」
「だって、なんか必死で可愛くて」
ふふと笑いを堪えるように目を細めたりょう君は「ねぇ、ざわ君もそう思うよね」と私の隣にいる金澤先輩に話を振った。なんで。先輩はあたしのこといつも可愛くないって言うのに、そんな事思ってる訳ないじゃん。そう思いつつも私の視線は先輩の方へ。
「可愛く、ないよ」
ぶっきらぼうに言った先輩だったけど、視線を不自然に泳がせた彼の言葉にはあまり説得力が無い。そんな先輩を目の当たりにした私にも動揺が移り、またりょう君が楽しそうに微笑んだ。
「やっぱり、二人とも可愛いよね」
りょう君の言葉に深く深く、ノートに頭が引っ付きそうなぐらい俯く。ページの端にある消し損ねたうさぎと視線が合い、あたしは熱さで溶けて消えないように目を閉じた。
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時