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「あー、あれどこやったっけ」
てつやが何を探しているのか、さっきからずっと部屋の中をうろうろしてる。後輩のいくとに見てないかを尋ねる声は、虫さんとゆめまるが騒ぐ声に掻き消された。彼等に混じり笑顔のりょうは、早くも顔を少しばかり赤くさせている。お酒の進むペースは早く、水が要りそうだなと様子を窺っていると顔色が全く変わっていない虫眼鏡と目が合った。
「全然飲んでないやん!A!」
部屋のサイズに合ってないデカい声が鼓膜を揺らす。あたしの肩へ雑に腕を回して絡んできた。
「Aが飲もうって言ったんやん!ほら、何飲むの?」
「そんなにハイペースで飲んだら臭い布団行きになる」
「どれにする?いっぱい買ってきたから選び放題だよ」
「そんな飲み方するのは学生でやめたの」
「何言ってんの?かっこつけんなって」
まだ飲み始めたばかりなのに、既に会話にならない。肩をぐわんぐわんと揺らされて「分かった分かった」とビールに手を伸ばすが、それを阻止される。
「おいおい、そんな可愛い飲み物やめよう。僕が美味しいの作ってあげるから」
「うざぁ、部長が過ぎる」
はしゃぐあたし達の視界の端、ハイボールの缶を手に持っているとしみつはニコニコしている。
「虫さんは飲ませたがりだよね」
としみつのセリフは虫さんの耳に入っても抜けていくだけ。ビールとか一番可愛くないだろと思いつつも、虫さんが当たり前のようにグラスに注ぐテキーラに思わず笑ってしまう。
「なんでメンバーじゃないのに、メンバーより飲まされんの」
「そもそもメンバーより飲むからやん」
「飲むけどさ、なんか勝負しよ」
「僕とAで?僕、負けんよ?」
「それはあたしの台詞」
部屋を片付けていた後輩のいくとが、遠くで苦い顔をしてるのが見えた。だがいつもの事のようにまた片付けを始める。いくとから目を逸らしたあたしは注がれたテキーラを飲んだ。空になったグラスを揺らして虫さんに視線をやる。
「あたしが勝ったら何でも言うこと聞いてね」
「勝ってから言おうね」
「俺も入れて」
ウキウキで入ってくるゆめまる。りょうは平和そうな顔で自分はやらないと、もう決めたかのように輪の外にいる。
「まだ11時だよ。飲み明かそう」
虫さんは今一度お酒を注ぎなおしたグラスを、あたしのグラスに軽くぶつけた。
夜は更ける、飲み会は始まったばかりだ。
**
⇒1時間後のしばゆー
鈍感なだけのしばゆー
⇒2時間後の虫さん
海賊と言いたい虫さん
⇒3時間後のてつや
大人になったてつや
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時