寄生虫°Zawa ページ35
クラスの男の子達が幼く見えたのは、先生の事を目で追うようになった頃からだ。
「ねー、たいきーー!」
「たいきじゃなくて、金澤先生な」
教卓の前で騒ぐ女子達の声が、あたしの耳を刺す。トンと音を立てて、回収したノートを机の端で揃えたあたしは横目で彼等のやり取りを眺めた。
「先生って彼女いなさそうだよね」
「居ても居なくても生徒には言わないから安心して下さい」
「えー、なんでー」
「恋愛も良いけど、課題ちゃんとやってきてね」
「だって先生の授業つまんないんだもん」
「君達は誰の授業だってつまらないでしょ」
冷めた瞳で彼女達を見据えた彼は、授業で使う教材の入った段ボール箱を持ち上げる。馬鹿で下らない彼女達の会話がそろそろ終わりそう。あたしは隙を見計らって「金澤先生」と女生徒等の間から彼の名前を呼ぶ。ふっとこちらを見た金澤先生。
「ノート、集めました」
「ありがとう。ついでに職員室まで運んでもらっていい?」
「はい」
段ボールを両手に抱えた彼の言葉に頷いたあたし。女生徒達はそれを見て茶化すように言う。
「そんなの手伝わなくていいじゃん。Aちゃんって真面目だよね」
「でも、金澤先生が困ってるから」
「ノートぐらい運べるくせに、Aちゃんに下心あるんだよ」
「馬鹿なことばっか言って喜んでないで、たまには授業ちゃんと聞けよ」
教室を出ながら金澤先生がそう言ったけど、彼の言葉は彼女達の耳に入って脳に渡る前にどろりと耳の穴から抜けていく。あたしはその溶けた液体が目に見えるようで面白い。この子達、先生の話を本当に聞いてないんだなぁって。呆れ顔で廊下に出た先生の背中を追う。
「バイバーイ、たいきくーん」
ノートを持った方と違う手で教室の扉を閉めて、騒ぎ立てるその声をぴしゃんと掻き消した。
「多目的室に運びましょう」
廊下を金澤先生と並んで歩くあたしは、彼が発言する前にそう言った。金澤先生は静かに「いや、でも」と何かを言おうとした。だけどその続きを発する事はなかったので、結局あたし達は用事など無い四階の多目的室に教材を運ぶ。
何食わぬ顔で多目的室に入るあたしとは違い、彼は警戒した様子で廊下をキョロキョロと見渡している。そして薄暗い部屋に入るなり、あたしは近くにあった机にノートを雑に置いて教室の隅に座り込んだ。そして不安そうな面持ちで扉の近くに立ち尽くす彼の名前を呼ぶ。
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時