本当は怖いんだよ°ryo ページ28
# 既婚者りょうくん先生です
あたしを見る彼の顔を隠す黒い縁の眼鏡。あれにはきっと度など入ってなどいやしない。ほら、また、見透かしたようなその瞳。もっと近くで見たい、触りたいけど駄目らしい。だって、彼は先生だから。
「その眼鏡って、伊達なんでしょ」
放課後の教室で、あたしは目の前に座る彼の顔を瞬きして眺めた。
「これね、ちょっとだけ度入ってんの」
「入ってるの?貸して、見せて」
「ダメ。そんな事よりも、親御さん来る前に進路のプリント埋めて」
今日は進路の懇談があるから、静かな教室に先生と二人きり。だけどせっかくの二人きりなのに、先生は冷たい。冷たいっていうか、いつも通りで変わらずだけどそのいつも通りが根本的に冷たい。
それに福尾先生は全くわかってない。あたしは高校入った途端に副担任だった先生の事を好きになったし、二年に進級して担任になった先生に泣く程喜んだし、バレンタインは誰よりも力込めて作ったし、毎日笑顔でおはようって言うし。
だって今日もプリントを白紙で出したのは先生と二人で話せるからと思って、そのために懇談だって最終日の最後を選んだ。
「将来の夢とか、別に…無いし…」
プリントにきつく押し付けたシャーペンの芯がぱちっと折れて机の端に飛ぶ。それを目で追い少しばかり困った顔をした先生は腕時計をチラリと見た。きっとこの後も仕事がある。だがあたしが呼び止めた。面談の時間まで、あと二十分くらいしかない。”親御さん”が来たら二人きりは終わりだ。
「小さい頃何になりたかった?」
「…かわいいお嫁さん」
「お嫁さんも良いけど、進路に関係あることを聞いてるの」
「そんなの高校卒業してからでいいもん」
「そんなもんあっという間、直ぐだよ。卒業したらどうすんの?」
「りょう君のお嫁さん」
そう言って名前呼び捨てにして上目遣いとかしてみたり。でも先生は呆れたように鼻を鳴らすだけ。
「残念でした。もう結婚してる」
「…知ってるし」
ほんとに知ってる。鬱陶しいぐらい。年齢、誕生日、血液型、好きな食べ物、出身校、家だって知ってるもん。こんなに知ってるのに、先生はあたしの事何にも知らない。誕生日や血液型はおろか、あたしが先生を好きだって事も知らない。
「あたしの進路知ってたって、意味無いし…」
「え?」
眼鏡を薄い布で磨いていた先生が耳を傾けて聞き返す。
「なんでもない!」
怒った勢いで椅子から立ち上がり、先生の手から黒縁眼鏡を奪い取った。そして直ぐにレンズを覗き込む。ほら、やっぱり伊達だ。
本当は怖いんだよ02→←So baby stay°toshimitsu
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時