その一言で1日が変わる02 ページ21
他クラスの彼へ、あたしは普段からよく話しかけに行ってた。それは彼が好きだからで、彼と話しているといつもより楽しいからで、彼のことを他の人よりも特別に感じていたから。
廊下をすれ違えば心躍らせて、合同授業があればラッキーだと舞い上がり、LINEでメッセージのやりとりをする度に、中身がどれだけ下らなくたってあたしは毎回嬉しさの頂点にいた。なのに。
「もしもし」
真っ暗な部屋に、またもや灯ったスマホの明るい画面とあたしの一言。
「遅くにごめん」
「…ん、いいよ」
電話越しに聞こえる彼の眠たそうな声、あたしは小さな声で向こう側の彼に「あのね」と言った。どうした?と彼が聞く。その声色を聞いてあたしはホッとした。いつも通りだとも思った。そして返事に迷う。
「どうもしてないけど、…あの、ちょっと、話したくなって」
電話した事なんて何度も何度もあるのに、初めてこんな台詞を口から吐いた。心臓がドキドキして、改めて恋をしているなぁと感じた。そして電話口の彼が少し困っているのが伝わってくる。カサカサと向こうの物音が聞こえた後、小さく口を開いた彼。
「俺も、かけようか迷ってた」
控えめな声を聞いた時、足の先から頭の先まで、わっと駆け巡る不思議な感覚。あたしはハッと口を開いて、そしてまた閉じて。
「じゃあ、よかった」
なんて、ツマラナイ返事をしてしまった。そして直ぐに言葉を考える。
「今日、学校で何した?」
「体育でサッカーした」
「あ、してたね。見てた」
あたしがそう言うと、彼が少しだけ笑う。なんで笑ってるのかなと不思議に思っていれば、彼はあたしに尋ねた。
「誰を見てた?」
その質問に、電話にも関わらずあたしはテンパって思わず口を金魚みたくさせてしまう。顔の見えない彼の反応を無駄に先読みして、回答に悩んだ。黙り込むあたしに彼は堰を切ったように小さく呟く。
「俺は、Aに気付いてた」
あたしの心臓がバクバクと鳴る。苦しいぐらい痛くなる。電話の向こうの彼は吐息混じりの声で「ごめん、普通に恥ずかしい」とだけ言う。同じような気持ちだと思った。
「あたしも、見てた」
その先は覚えてないけど、あたしの心臓はずっと早くて、脳はずっと夢にいるみたいに不思議な感覚の中で踊ってた。そんな君の一言であたしの検索履歴が安定して、しかも一日が素晴らしい日に変わるなんて、君は知っているのかな。嗚呼、君も同じなら幸せ。
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匿名(プロフ) - Mrs.ぱんぷきんさん» リクエストありがとうございます!亀さんペースですが、ゆるゆる執筆中ですので気長にお待ち頂ければと思います。 (2019年8月13日 11時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
Mrs.ぱんぷきん(プロフ) - てつやさんのお話がもっと読みたいです!!!お時間がある時で全然大丈夫なので、ぜひともお願いします! (2019年7月31日 9時) (レス) id: 318cc8d8b4 (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - あゆみさん» ご報告ありがとうございます。一応全文確認してみたのですが、どこでスルーしているのか確認出来ずです…。タイミングが有ればで良いので、どのお話かだけ教えて頂けると凄く助かります。よろしくお願い致します (´._.`) (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - らいさん» お返事遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。ご要望にお応えできるかは分かりませんが、なるべく優先して考えたいと思います^ ^ コメントありがとうございました! (2018年8月20日 17時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
あゆみ - goziga aruyo----- (2018年8月19日 9時) (レス) id: a08ea1484b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2018年7月23日 0時