09.無防備☆左フック ページ9
SIDE.JIN
殺虫剤を振りまくったせいか、なんとなく部屋が煙たい。手に持っていたティッシュの塊をこれに入れてと彼女がビニール袋を手渡してきた。宣言通り俺に持ち帰らせようとしてる辺りマジで図太い。
「ありがとうございました」
玄関先で頭を下げた彼女の後頭部を無表情で見下ろす。よくよく考えるとこの子、めっちゃくちゃ無用心じゃない?もし呼び出したのが俺じゃなく別の奴だったらと思うと色んな意味で恐怖を感じる。「本当に助かった」と真剣な顔の彼女を尻目に、俺は”あのさ”と口を開いた。
「ん?」
「一応言っとく。パニクって頭回らなかったのは分かるけど、今度から知らない奴を簡単に家にあげない方がいいよ」
そう言えば、彼女は不満気に首を小さく傾ける。
「あげるなって…知らない人じゃないですし」
「知らないでしょ。なんにも」
「……まぁ…そうですけど。下の階の人だし、今後も顔合わせると思うので」
「一回喋っただけじゃん。俺はあんたの事何も知らない、名前すらね」
「あたしは知ってます。渡邊でしょ?」
「あのさぁ………」
それは俺の名前じゃないし、まず表札に書いてあるだけの苗字だし、なんかもう色々突っ込みどころがあると思ったけど、そんなのはどうでもいい。
「…とにかく変な奴もいるんだし、防犯のためにも男を家にあげるなって言ってんの」
「え、じゃあ虫と同居しろって?」
此の期に及んでまだ言い返すつもりなのか、小首を
「…もし俺があんたの事襲ってたらどうしてたの?」
「警察呼びます」
「絶対無理だから、男って怖いよ?」
「知ってます。でもあたし、護身術教えてもらったことあるんで!」
ふふふと笑って答えた彼女だが、口だけはいつも強気だ。
「分かった。出来るもんならやってみろよ」
「え?」
少し脅かすつもりで彼女の手首を掴めば、途端にこちらを見上げて目を丸くした。片手に持っているビニールに入った虫を彼女の顔に近付けて「ほらな、逃げらんねーだろ」そう言った瞬間、嫌ってほど聞かされたキャーの絶叫の後に顔面に凄まじいフックが飛んできた。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時