08.二つの歯ブラシ ページ8
SIDE.JIN
「キャーーー！！！」
もうその叫び声、そろそろ聞き飽きた。チラリと影が見えれば叫び、俺がそっち行ったと伝えれば叫び、なんか潰すもの貸せと言えばまた叫び、挙げ句の果てに潰すんじゃなくて静かに形あるままにしてとか意味の分からない事を言い出す。何かある毎に叫ばれて逆に集中が途切れる。そしてギャーギャー騒ぎながら(実質騒いでいるのは彼女だけ)、それでもなんとか彼女の言う通り”形あるまま”退治した。ティッシュで包んだ虫を「ゴミ箱に捨てて良い？」と彼女に尋ねれば、それはもう一際大きく絶叫する。
「あたしの家は嫌です。そっちの家に捨てて」
「もう動かないから大丈夫だって」
「嫌です。ゴミ箱使えなくなるから」
「もー、マジでなんなのこいつ…」
あり得ないと文句を言いつつも、とりあえず手を洗いたいと洗面台へ向かう。こんな事のためにわざわざ夜中に呼び出されて、しかもお土産に要らないものを持たされる。
「…………」
飛んだ災難だと両手で石鹸を泡立てていれば、沢山の化粧品達の隣に仲良く二つ並ぶ歯ブラシが目に入った。色はピンクと青。そういう事かと思いつつ俺は彼女を振り返る。
「あんた此処に男と住んでんの？」
「…え？あたしがたまに来るぐらいですけど」
「なら住人じゃねぇじゃん」
「それ今関係なくないですか？」
彼女の歳ぐらいでこのマンションに一人暮らしは少し奇妙だなと思っていた。蓋を開ければ男の家か。
「今日は男いねぇの？」
「遅くなるって聞いてます」
相手は彼女とは割と年齢が離れている社会人らしい。そりゃあそうか、ある程度稼いでないとこんな大きなマンションには住めない。
「遅くって、浮気してんじゃねぇの？」
「そんな事ありませーん」
「理由はなんて言ってたの？」
「仕事に決まってるじゃないですか」
「へー、怪しいな」
ニヤニヤしながらそう言えば、間髪入れず目尻を尖らせた彼女は俺をきつく睨んだ。
「会ったこともない他人の悪口言うなんて、性格悪いと思います」
それはあまりに力強い眼差しで、俺は虫を片手に「冗談だよ」と彼女から顔を背ける。出会ったばかりの殆ど知らない奴と、しかも二人きりでここまでハッキリと言えるなんて、本当に気が強いと思う。彼氏なのか何なのか分からないその相手の男も、こんな風に彼女から言われてたりするのだろうか。そう思うと少し不憫だったりもする。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
