50.何食べようか ページ50
「A、お腹空いてる?」
彼の問い掛けにあたしは車の中にある時計を見た。時間は丁度六時を過ぎたところで、空いているかと聞かれれば空いているかもしれないといった感じ。
「まぁまぁかな」
「何食べたい?」
「ガッツリいきたい」
「じゃあ肉にしよう」
予定がテキパキと決まって行くと気持ちいい。彼はよく行く焼肉屋さんが有るからとそこに連れて行ってくれた。
そこは全席個室で和モダンな感じの店で、まさか口説かれるのか?と思っちゃうぐらい雰囲気がある。奥の個室に案内されあたしは少し緊張しつつ目の前に座った彼に尋ねた。
「ここ高いんじゃない?」
「うん。ちょっとだけ」
「あたし給料日前なんだよね」
「え?いいよ。こっちから誘ったんだし、女の子には出させないよ」
それをサラッと言っちゃう感じ、ステップっぽいなと思いつつ「ゴチになります」と軽く頭を下げた。爽やかに笑った彼はあたしにメニューを手渡してくる。
「好きなもの頼んでね」
オススメはこれと、大きな写真のユッケを指差した彼だけど、あたしは肉ならなんでも好き。ステップに任せるよと言えば、頷いた彼はもう決まっていたらしく呼び出しのベルを押した。近くにいたのか従業員が直ぐに個室の扉を開ける。
「ご注文お伺い致します」
「とりあえず烏龍茶と、Aは?」
「あたしも同じので」
それ以外のメニューも頼み、ジョッキが二つ揃ったところであたし達は「かんぱーい」とグラスを合わせた。喉を通る烏龍茶はキンキンに冷たくて、食道から胃を通過したとこまで何となく分かった。
「喉乾いてたから美味しい」
幸せそうに顔をしかめたステップ。烏龍茶でこんな良い表情出来るって凄いなと思いつつジョッキを机に置いた。ステップも奢ると行ってくれてるし、嫌な事は肉食って忘れよう。うん、そうだ。楽しもう!
「ねぇ、ジンくんってさぁ」
そう決心したのも束の間、どこからか一際大きく聞こえた声にあたしは思わず動きを止める。それはステップにも聞こえたらしく、あたし達は個室の格子から見えた人の影を目で追った。
「あ、ジン君じゃん!」
ステップの声は、彼が自分で思っていたよりも大きかったと思う。ふと廊下側にいた彼等もあたし達の部屋を見たのだ。すれ違いざまに交わる視線。一瞬だったけど、確かにあれはジン君だった。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時