48.素直になれない ページ48
なんでそこまで言われないといけないんだ。ジン君からはあたしの気持ちを汲み取ろうっていう意思が見えないし、ただ彼が苛々する何かの八つ当たり材料にされてる感じがする。
絶対泣かないって決めてたのに、ジン君の言葉を聞いてると思わず目から涙が出てしまった。泣きたくなかったのに!と思うと、より涙が溢れてきて収集がつかなくなる。あたしが泣き出したのを見て少し身を引いたのか、何も言わなくなった彼に怒鳴った。
「あたしだって、迷惑掛けたくないと思ってこうしたの!お陰でもっと迷惑掛ける事になっちゃったけど、それは悪いと思ってるし、でも全く考えずに行動した訳じゃないもん!」
そう叫んで、これでもかってぐらいわんわん泣いてやった。ムカついたし、バカバカしかったし、ジン君の言う通り過ぎて悔しかった。あまりにも全力で喚くあたしに気圧されたらしいジン君へ、渡邊さんがやれやれといった様子で目をやったのが視界の隅に窺える。そんな彼はあたしの名前を優しく呼ぶ。
「Aちゃん。聞いて」
「ジン君って優しくないよね…!」
「ジンが怒ってるのは心配だったからだよ」
「……………………嘘だ」
そうかもしれないと思ったけど、どうしても素直に心配してくれてありがとうとは思えなかった。ジン君は溜息を吐いて分が悪そうに髪を雑に掻き乱す。
「心配とかじゃなくて、俺は馬鹿な事すんなって言ってるだけ」
立ち上がったジン君はハッキリとそう言い残し、部屋を出て行ってしまった。
「……なんなの」
短時間で一気に泣いたから瞼が重い。あたしは小さく呟いて、手を冷やしていた保冷剤を瞼に押し当てた。肌に触れると、溜めていた熱が保冷剤の氷でひんやりと冷まされていく。今までずっと鳴っていた救急車のサイレンが遠ざかっていくのが聞こえて、あたしはまた瞼を持ち上げた。すると目の前にいた渡邊さんがあたしを宥めるように微笑む。
「あいつ素直じゃないんだよ。でも分かってあげて」
「…………」
「無関心だったり、心配じゃなかったらあんなに怒ったりしないって俺は思うよ」
「……あたしもそう思います」
あたしは俯いて、ゆっくりと目を閉じた。分かってるし理解してるつもりだけど、もっと言い方があるでしょ…と思うあたしは、まだ少し幼いのかもしれない。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時