47.優しく無い ページ47
SIDE.JIN
灰皿を片手に部屋に戻れば、リビングに入るなり抱き合っている二人に動揺して俺は思わず足を止めた。でも直ぐに状況を飲み込んで彼等とは少し離れた場所に座る。短時間にニコチンを大量に摂り過ぎたのか、馬鹿みたく気分が悪い。
「もう、大丈夫です」
俺の気配に気付いたのか、Aはぐらりと頭を上げてマホトから距離を置いた。彼女の顔を窺ったけど泣いた気配はない。我慢したのかと思いつつも二人のやり取りを見つめる。
「死にました?」
ふと彼女がマホトに尋ねると、微かに笑顔を見せたマホトは首を横に振った。
「そっか」
彼女はホッとしたような残念そうな、どちらとも言えない表情で俯いて、未だ赤いままの右手に視線を落とす。
「指、折れてなかった?」
「ああ…うん。多分大丈夫」
「見た目じゃどうなってるか分からないから、一応病院行った方がいいよ」
「ありがとう」
彼等が急激に近づいていくのを肌で感じ取り、俺はまた煙草に手を伸ばしそうになった。だけど思い留まりAに「なんで一人で行ったの」と尋ねる。すると彼女は俺を見て数回瞬きをした後、ゆっくりと口を開いた。
「荷物、取りに行きたかっただけ」
ぶっきらぼうな返事に眉をひそめる。
「なんで一人で行った?」
「いけると思ったの」
「は?ちょっと考えれば無理って分かるだろ」
「考えたけど、まさかあそこまで頭がおかしいと思わなかったし」
「浅い、まず想像力が無いんだよ。誰かに声掛けてればこんなことになってなかった」
止まらない。あれもこれも、それも、思いつくこと全部言ってやりたい。もう言わないと気が済まない。胸の奥の気持ち悪いざわざわを吐き出すように俺は彼女を責めた。
「それだけで済んだから良かったけど、マホトが気付かなかったらどうなってた?」
「…………」
「お前危なかったんだぞ。もう少しで」
「言われなくてもわかってる…」
「もう少し考えて行動しろよ。あいつがどんな奴かとか、そんなんじゃなくてまず男の家に一人で行くなっていう話」
「なによ………そんな責めなくたっていいじゃん…」
「だから、お前が勝手なことするから言っ」
「だって!!!」
一際大きな彼女の声が部屋に響いた。突然叫ぶものだから、面食らった俺を睨んだ彼女の目から涙が溢れ出る。ギョッとしたが、もう止められないのかAはポロポロと大量の涙を流した。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです! (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます!時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます! (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:匿名 | 作成日時:2017年7月10日 7時