05.少し足りない ページ5
どこからか虫の鳴く声が聞こえて来る。夏の夜は、空に太陽が出ていないにも関わらずむし暑い。そんな熱帯夜の中、財布片手にコンビニへ来たあたしは沢山のお菓子をルンルンでお買い上げ。だった筈が、下がり眉の店員さんを前にしてまごついていた。「お会計９５８円でございます」と言われ財布の中を見たところ、９５６円と万札しか入っていなかったのだ。あと２円あればぴったりすっきり、万札を出さずお釣りも無しで支払えるのに。画面に並ぶ”９５８”の文字を目で追い、あたしは一円玉を探した。
「……２円…２円」
だがしかし無い。いつもはかさ張るぐらい入っている小銭達なのに、こんな時に限って何処かへお出かけしてたりするのだ。数回瞬きをしたあたしは少々落胆しながらも「やっぱり無かったんでこれで」と万札を取り出そうとした。万札の端が財布から覗いた時、目の前にいる店員さんが後ろの方に視線をやるのをあたしは見逃さない。
「俺、あります」
背後から聞こえた声と共に、スッと横からカウンターに向かって手が伸びてくる。その手からレジのトレーに置かれたのは一円玉が二枚。あたしはすぐに後ろを振り返った。
「どうぞ。丁度でしょ」
控え目にそう言ったのは下の階の渡邊さんで、店員さんがあたしと彼を見渡し「丁度頂戴致します」と笑顔でトレーを引く。
「あ、ちょっと」
すぐさま止めに入ろうとしたあたしだが、ガシャンと音を立てて開いたドロアーに唇をゆっくりと閉じた。今一度後ろを向いて「ありがとうございます」と渡邊さんに軽く頭を下げれば、彼は「いいえ」とだけ呟く。それにしても目が合わない。合わせようとしていないのか、それともたまたま合わないのか。だからといって深入りする訳もなく、コンビニの袋を受け取ったあたしは彼にもう一度頭を下げた。
「…………じゃあ」
「あ、待って」
「え？」
「一緒に、帰りません？」
「………………は？」
一緒に帰る？思わず口が開きっぱなしになった。見合う言葉の出て来ないあたし。それを見た彼が慌てて「え！いや！いやいや、深い意味とかなくて、別に方向が一緒だから、ただ、あの…」と露骨に焦り出したのであたしも「ああ、はい」としか言えなくなった。そのやり取りが余程恥ずかしかったのか、耳まで赤くして精算を終えた彼は俯いたまま「行きましょう」とだけ呟く。そこまで赤くなるぐらいならなんで言ったんだろうと不思議に思いつつも、あたしは小さく頷いて彼の背中を追った。
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匿名(プロフ) - 湯豆腐さん» とても嬉しいコメントありがとうございます^ ^ なかなか試行錯誤しておりますが、私なりの彼等を楽しんで頂ければと思います。お話いっぱいになり移行しましたので、次も末永く応援頂けると嬉しいです！ (2018年4月26日 21時) (
レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 花恋さん» お返事大変遅くなりました。時間が空きながらの更新ですが、それでも楽しみにしてくれる方々にとても感謝しております。またお話増えましたので、お時間ある時にでもちらりと覗いてみて下さい^ ^ お待ちしてます。 (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - なななさん» お返事大変遅くなり申し訳ないです。応援ありがとうございます！時間が出来また更新し始めたので、これからも気長に見守って頂ければ嬉しく思います^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
匿名(プロフ) - 夜星さん» お返事大変遅くなってしまいました。最近時間が出来たのでゆるゆると更新しております。暇な時にでも覗きに来ていただければ幸いです^ ^ (2018年4月26日 21時) (レス) id: 5ddf379a2d (このIDを非表示/違反報告)
湯豆腐(プロフ) - 匿名さんがかくジンくんとマホトくんが一番好きです。匿名さんも大好きです。これからも応援してます！ (2018年4月25日 19時) (レス) id: 65ae9a78b1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：匿名
| 作成日時：2017年7月10日 7時
